# 2024年新作映画 ベスト10
## 今年の映画鑑賞
2024年、劇場で鑑賞した新作映画(日本で初めて劇場公開された映画)はぴったり80本だった。
2023年は100本を少し超えるくらいだったので、今年は少し鑑賞本数を減らしたことになる。
劇場での映画鑑賞には移動費が含まれるため、それを節約するために一日に2本、3本と梯子するのが基本だ。
しかし「交通費の節約」のためだけに複数本梯子するとなると、時間がちょうど良いからという理由だけで明らかに好みではない方向性の作品にも手を出すことになりがちだ。
今年はそのような動機による映画の選択を意識的に抑えていた。その結果としての鑑賞本数減であり、あからさまなハズレは一本もなく平和な映画ライフを楽しむことができた。
ということで、今年観た新作80本から、選りすぐりのベスト10作品それぞれに一言ずつコメントを付して振り返りたい。
## 新作映画 ベスト10

### 1位 [[🎞『美しき仕事』]]
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> ![[🎞『美しき仕事』#概要]]

この記事の冒頭で「新作映画(日本で初めて劇場公開された映画)」と回りくどい定義をしているが、その原因が一位の本作だ。初公開は1999年なので新作感はないが、今年一番心をぶち抜かれた作品なので外すわけにはいかない。
多様な人種構成からなる外国人部隊。筋肉質な美しい男たちが、これまた美しい風景のジブチで訓練する様を、まるで舞踏のように見せるやはり美しいショットが忘れられない。
そんな規則的な舞踏と対比するように配置された最後のダンスは今年一番の衝撃だった。それまでの90分が、最後の一分ですべて塗り替えられてしまう、はじめての映画体験だった。
### 2位 [[🎞『チャレンジャーズ』]]
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> ![[🎞『チャレンジャーズ』#予告編]]
> ![[🎞『チャレンジャーズ』#概要]]

今年一番、エキサイティングでセクシーな映画だ。
三人の主人公たちの間に張り巡らされた関係性の糸。過去のエピソードを重ねるに連れそれらがじわじわと張力を増していき、それがクライマックスのとあるアクションですべてが千切れ織り合わさって、たった一本の糸になる。ラスト、男二人のプライドバトルに身体と魂が震えた。
### 3位 [[🎞️『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』]]
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今年一番の号泣映画だ。映像を観ると1970年代に製作された映画としか思えず、これが2020年代に撮られたということ自体が驚異的だ。この「古い」と感じるところにこそ学びがある、という物語のテーマにもマッチしている。人類は、そう簡単には変わらない。不変的な価値とは何か、それは歴史にあり、過去にあるのだ。
「holdover」で辞書を引くと「残留者」、そして「遺産」。完璧なタイトルだ。
### 4位 [[🎞『ぼくのお日さま』]]
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スタンダードサイズの狭い画面に溢れるように注がれる光。とにかく撮影が美しく、そこで描かれる三人の交流は多幸感に溢れている。観ている間、本当に時間が止まってほしいと思った。だけど時間は、映画は止まってくれない。愛おしく幸福な時間もいつかは終わる。それも突然に、不本意な形で。その痛みをどう乗り越えるか。少年少女の未来はまだ広がっている、そう願いたくなるラストが今も私の胸に深く刺さったまま。
### 5位 [[🎞『ゴンドラ』]]
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このベストにはランクインしていないが、私の中では今年公開された[[🎞『Chime』]]と同じフォルダに収まっている。小さなサイズの中で、ただひとつの方向へと突き抜けた表現が貫徹されており度肝を抜かれた。[[🎞『Chime』]]の場合は恐怖に、そしてこの[[🎞『ゴンドラ』]]の場合は可愛さだ。リアリティをかなぐり捨てて、ひたすらに「可愛いのイデア」にタッチすることをめざしているような、そんな狂気すらも感じる愛らしさ溢れる一作だ。
### 6位 [[🎞️『ぼくが生きてる、ふたつの世界』]]
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> ![[🎞️『ぼくが生きてる、ふたつの世界』#概要]]

まったく違う人生を歩んだ人物であっても、想像力と感情移入という能力を発揮することで擬似的にその人生を体験できる。私はコーダではないけれど、コーダとしての生を確かに追体験できる。しかし本作はそんな追体験という地点すらも飛び越えて、主人公の青年がコーダではない私とあるところでは何も変わらないんだ、と思うに至らせる。極めて丁寧な積み重ねがあってこその剛腕に落涙しながら痺れた。
### 7位 [[🎞️『ロボット・ドリームズ』]]
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> ![[🎞️『ロボット・ドリームズ』#概要]]

月並みで口にするには少々恥ずかしいけれど、クライマックスの数分間はやっぱり「映画の魔法」という言葉がふさわしい。「愛と別れ」というテーマを男女や人間関係という領域の外にまで広げられたのは、犬とロボットの擬人化で描かれるからこそだ。[[🎞️『ロボット・ドリームズ』]]というこの映画自体が、今では僕にとってのお友達ロボット。[[🎵『セプテンバー』]]を耳にするたびに、この映画のことを思い出してステップを踏む。
### 8位 [[🎞『フォールガイ』]]
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> ![[🎞『フォールガイ』#概要]]

スタントマン。身体を張る職業の代表で、いかにもマッチョなイメージを思い浮かべてしまうが、そんな危険なアクションに挑む彼らもまた恐怖心をその胸に抱えるひとりの人間であることを再確認する。
そんな熱いドラマの裏で、映画作りとスタントマンという職業についてのメタ的な仕掛けが映画の外側へ爆笑と共に炸裂する。鑑賞直後に立てた親指はいまもまだ立ったままだ。
### 9位 [[🎞️『密輸 1970』]]
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> ![[🎞️『密輸 1970』#予告編]]
> ![[🎞️『密輸 1970』#概要]]

今年も韓国映画はどれもレベルが高くて面白かった。[[🎞️『梟-フクロウ-』]]や[[🎞『ソウルの春』]]もこのベストに含めるか迷うくらいに最高なのだが、韓国映画のベストを選ぶなら本作だ。[[コンゲーム]]要素を含む犯罪サスペンス、少数対多数の肉弾アクションから、クライマックスの海洋アクションまで、ひたすらにオモシロイの鶴瓶うちだ。
### 10位 [[🎞『マッドマックス:フュリオサ』]]
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> ![[🎞『マッドマックス:フュリオサ』#予告編]]
> ![[🎞『マッドマックス:フュリオサ』#概要]]

もはや伝説的傑作アクション映画としてのポジションを確立した[[🎞『マッドマックス 怒りのデス・ロード』]]のスピンオフとして、まったく異なる作りにチャレンジした意欲作。[[🎞『マッドマックス 怒りのデス・ロード』]]が後に神話となる数日間を描いているとしたら、今作はその神話に至るまで十数年間を描いた大河ドラマだ。
興行的には惨敗して暗雲立ち込めているが、もうひとつのスピンオフ企画[[🎞『マッドマックス:ザ・ウエイストランド』]]が何としてでも実現するよう、ここにも好きな人間がいるぞと声を上げていきたい。