# 人身攻撃
## 概要
ある主張の真偽を、その内容ではなく発言者の属性や人格、立場などに基づいて評価する論証。
発言者が信頼できない・不誠実・利害関係があるなどの理由で主張を退けるが、主張の論理的妥当性と発言者の性質とは無関係であるため、[[詭弁]]となりうる論証法のひとつ。
**人格攻撃論法**、**対人論証**、あるいは**人格に訴える論証**とも呼ばれる。英語では*argumentum ad hominem*と呼ばれる。
## 詳細
### 五分類
[[📘『論より詭弁 反論理的思考のすすめ』]]では、研究者によってその分類法は様々であると前置きしたうえで、人身攻撃(作中では「人に訴える議論」と表記)の型として次の5つに分類する。
#### 1. 「悪罵」型(the abusive type)
ある人物の発言を、その発言内容に対する批判によってではなく、彼の人格などを攻撃することによって否定しようとする。
>[!example]
> 「彼は人間的に信用できないから、彼の言うことも間違っている」
#### 2. 「事情」型(the circumstantial type)
ある人物の発言を、彼の行動との不一致や過去の発言との矛盾を指摘することによって否定しようとする。
>[!example]
> 「あなたは以前そう言っていなかった。だから今の主張は信用できない」
#### 3. 「偏向」型(the bias type)
ある人物の発言を、彼の立場が偏向している、あるいは公平でないことを指摘することによって否定しようとする。
>[!example]
> 「彼はその企業から報酬をもらっている。だからその意見は信用できない」
#### 4. 「お前も同じ」型(the tu quoque type)
これは主として対面型の議論で用いられる。相手がこちらのある行為を非難してきたときに、それと同じ、あるいは類似した行為を相手もまたなしていることを指摘して、その非難を骨抜きにしようとする。
>[!example]
> 「君だって以前は同じことをしていたじゃないか」
#### 5. 「源泉汚染」型(the poisoning the well type)
これは[[#3. 「偏向」型(the bias type)|「偏向」型]]をより強めたもの。「偏向」型がその時々の議論における論者の立場の偏向あるいは不公平を指摘するのに対し、「源泉汚染」型ではそもそもその論者の立場は根本的に偏っているのでその主張は到底受け入れられないと突き放す。
>[!example]
> 「彼は極端な思想の持ち主だから、何を言っても聞く価値がない」
## 関連ノート
- [[📘『論より詭弁 反論理的思考のすすめ』]]
## 関連リンク
- [人身攻撃 - Wikipedia](https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E8%BA%AB%E6%94%BB%E6%92%83)