# 2025-02-01 [[🎞️『室町無頼』]]を観る
## 感想
劇場で鑑賞。

### 2025年、時代劇再興の流れ
昨年、インディーズ映画ながら大ヒットを飛ばした[[🎞️『侍タイムスリッパー』]]は会津藩の衰退と時代劇というジャンルの凋落とを重ね合わせてみせた。
現代パートは2000年代を舞台としており、それから2020年代に向かって時代劇はその勢いをどんどん失っていく、という事実が主人公の心情を理解する補助線となっていた。
しかし、[[🎞️『侍タイムスリッパー』]]のヒットはもちろん、アメリカ制作ながら極めて高い評価を得た[[📺️『SHOGUN 将軍』]]も2024年。
私が観た映画でも[[白石和彌]]監督の[[🎞️『碁盤斬り』]]、[[🎞️『十一人の賊軍』]]の二作も面白かった。近年稀に見る、時代劇が盛り上がった年だったと思う。
そして本作[[🎞️『室町無頼』]]は、2025年もその勢いを落とすまいという気合を感じさせる快作だった。
### 好みすぎるロケーション
本作が描く室町時代はなかなかに治安が悪い。
疫病と飢饉で遺体がゴロゴロと転がっている。音楽からも明らかに西部劇風の作りを意識しており、全体的に乾いた荒野のロケーションが目立つ。
時代劇+荒野というと、マイ・フェイバリット・ゲームのひとつ[[🎮️『Kenshi』]]を想起せずにはいられない。黒澤時代劇に影響を受けた本作は、独特な未来SF世界の中に侍や刀などの時代劇的な人物や武器が多数登場するのが特徴。広大なオープンワールドマップはその大部分が[[🎞️『室町無頼』]]で描かれているような治安の悪い荒野だ。
![[🎮️『Kenshi』#「Kenshi」公式ビデオ (日本語バージョン)]]
私は[[🎮️『Kenshi』]]的な映像を見るとそれだけで興奮する体質なので、その点では本作は最高である。
ロケーションだけでなく、衣装や小物、朽ちた小屋など、美術のそこここからも[[🎮️『Kenshi』]]味を感じることができた。後述する「乱闘」感も同様である。
### 外連味重視のアクション
本作はリアリティ重視の時代劇ではない。
チャンバラアクションは適度な派手さを味付けしているくらいだが、中盤の才蔵([[長尾謙杜]])の修行シーンなどはかなり荒唐無稽で画的にも楽しい。
[[入江悠]]監督といえば長回しショット。今回、[[東映]]制作の力もあってか、VFXを活かした見応えのある長回しアクションが用意されている。
### 祝祭的な一揆
本作のクライマックスは都を舞台とした一揆だ。主人公の蓮田兵衛率いる様々な集落から集った民たち押し寄せる。
そこで起こることは暴動と、それを鎮圧せんとする殺戮なのだが、リアリティを抑えめにしていることもあってあまり悲惨なものとして描写されていない。むしろ、そのとてつもない人数のエキストラによるぶつかり合いはどこか祭のようにも見える。
そうかと思いきや突如歌い始める民たち。ここにきて確信した。本作は理不尽な権力への抵抗としての一揆(≒デモ)を僅かにでもネガティブなものとして映すまいとしていると。
このバランスはエンターテインメントとしての気持ちよさを重視していることはもちろん、近年の時勢を反映したもののように思う。この祭を率いる者、という兵衛のポジションを思うと[[大泉洋]]というキャスティングも絶妙である。
## 情報
![[🎞️『室町無頼』#予告編]]
![[🎞️『室町無頼』#主要スタッフ]]
![[🎞️『室町無頼』#関連リンク]]