# 2025-02-07 [[🎞️『ファーストキス 1ST KISS』]]を観る ![[ネタバレ#^warning]] ## 感想 劇場で鑑賞。 ![Xユーザーのこーしんりょー@SpiSignalさん: 「『ファーストキス 1ST KISS』観た。2009年8月1日にタイムリープする方法を見つけた主人公は、2024年に夫が事故死する未来を変えるためにこの一日を繰り返す。時間SFを前にすると身構えてしまうオタクだが、40代を主人公とした大人な恋愛映画として見事な軽やかさで成立されている。好き。」 / X](https://x.com/KO_SHIN_RYO/status/1887866057723084892) ### 時間SF+恋愛映画 2024年7月10日に夫の<ruby>駈<rt>かける</rt></ruby>が駅のホームから落ちた赤ん坊を救うために線路上に降り、赤ん坊とその母親を救うことはできたが自らは轢かれて死亡した。 妻のカンナはその年の冬、千代田トンネルを通る。すると、その先は2009年8月1日、駆と出会ったホテルの近くに繋がっていた。 カンナはタイムトラベル先の行動によってそれからの駈の未来が変わることに気づく。この現象を駆使すれば駈が事故死する未来も変えられるかもしれないと、何度も2009年8月1日を繰り返す。 そんなわけで、[[タイムトラベル]]と[[タイムループ]]を組み合わせた時間SF+恋愛映画だ。 エロゲーに代表されるゲームでは定番の設定で、どうしても男性オタク的な想像力が働いてしまうジャンルだが、それを現在人気絶頂の[[塚原あゆ子]]監督が手掛ける。 彼女は同じく[[タイムトラベル]]を題材とした[[🎞️『コーヒーが冷めないうちに』]]を監督しており、こちらはかなり苦手な作品だった。「4回泣けます」というキャッチフレーズが悪い意味で有名で、今振り返ってもやっぱり神経を逆撫でするフレーズだと思う。 そんなわけで、塚原監督の[[タイムトラベル]]映画再挑戦、という観点で観るとリベンジ成功な一作だと思う。私の口にも合う、好ましい一作に仕上がっていた。 ### 変えられるもの、変えられないもの 過去へ移動するタイプの[[タイムトラベル]]は不満ある現在を変えたいという願望を満たす。あのときもしも、ああしていれば、現在はもっと幸福なものだったのかもしれないと。 表向き、劇中でカンナが変えたいものは駈が事故死してしまうという未来だ。 しかし、[[タイムループ]]と明言していることからも分かるようにその願望はなかなか叶わない。本作の[[タイムループ]]は主人公のカンナ自らの意思で生じさせる。それは彼女の願望が叶わないからであり、何度も繰り返される時間はその足掻きだ。 どうやら本作の[[タイムトラベル]]では変えられるものと変えられないものがあるようだ。その理屈について個人的な答えは持っているが、それをここで述べると結末の予測がかなり絞られる考えなのでここでは伏せておこう。 「駈の事故死」という象徴的なイベントが隠れ蓑になっているが、カンナにとっての本当の願望は実は無意識下にある。それが第三幕の展開につながっている点も巧みだ。 本作の[[タイムトラベル]]で変えられるもの、その範囲で叶えられる彼女の願望は、ある意味で[[タイムループ]]を断つ役割も兼ねていると思った。 「[[タイムループ]]映画は実質乗り物パニック映画」というのが持論だが、やはり本作も[[タイムループ]]からカンナが降りた、と確信させて幕を閉じる。 ### 和製歳の差ロマコメ [[タイムループ]]はひとつのシチュエーションを何度も繰り返させる。本作の場合は、[[松たか子]]と[[松村北斗]]の組み合わせによる、和製歳の差[[ロマンティックコメディ]]だ。 [[松たか子]]は何だかんだいってもやっぱり美しいわけだが、特に本作で見せるチャーミングさは歳の差恋愛によリ生じる嫌らしさの脱臭に成功している。 そして[[松村北斗]]。[[🎞️『すずめの戸締まり』]]を例に出すまでもなくやっぱり声が最高に良い。それでいながら素朴な青年・壮年役がぴったりはまるあの清潔感と演技力。今一番、いろいろなことをやらせたい役者の上位ではなかろうか。 この二人による初対面イチャイチャのループも大変美味しくいただけた。 ### [[🎞️『366日』]]との比較 同時期に公開された恋愛映画として、たまたま似たような要素がある[[🎞️『366日』]]との比較が面白そうなのでメモがてら記しておく。 >[!check] > 興行収入ランキングで初週6位だったにもかかわらず、ランクアップを続けてついに4週目に1位に輝いた、今一番勢いある映画だ。 > - [[2025-01-21 🎞️『366日』を観る]] どちらも2024年が舞台。 [[🎞️『ファーストキス 1ST KISS』]]はタイムスリップで15年前である2009年が重要な年となっている。 一方の[[🎞️『366日』]]はうるう年が重要なモチーフとなっていることからやはり2024年が舞台で、12年前、16年前に当たる2008年と2012年が重要な年となっている。 いずれも現代から見た過去が重要な鍵となっている作品で、いずれも恋愛にまつわる後悔が描かれる。しかし、この二作の主要人物はちょうど10歳年齢が離れており、そこが映画のターゲット層を大きく分かつ要素となっているように思う。 ターゲット層が変われば当然演出も変わる。 私には音楽含めて過剰な大仰さで感動を煽る[[🎞️『366日』]]よりも、軽やかな演出で前向きに人生観を語り切る[[🎞️『ファーストキス 1ST KISS』]]の方が好ましかった。 ## 情報 ![[🎞️『ファーストキス 1ST KISS』#予告編]] ![[🎞️『ファーストキス 1ST KISS』#主要スタッフ]] ![[🎞️『ファーストキス 1ST KISS』#関連リンク]]