# 2025-02-20 [[🎞️『ペーパーチェイス』]]を観る
## 感想
DVDで鑑賞。インターネット配信はされていないようなので図書館で借りてきた。
### 観たきっかけ
[[📘『アメリカ映画の文化副読本』]]で紹介されていた映画の中でもっとも興味を惹かれた一作だ。
1973年公開。[[アカデミー賞]]では厳格な教師であるC・W・キングスフィールド役を演じた[[ジョン・ハウスマン]]が助演男優賞を受賞している。
ハーバード・ロー・スクールを舞台に勉強に励む若者たちを描いた青春映画である。[[📘『アメリカ映画の文化副読本』]]の紹介では、本作以上にアメリカのトップスクールの大学院の授業の厳しさと成績競争を巡る雰囲気を正確に描写した映画は見当たらないという。
### 偉大になること、負け犬にならないこと
鑑賞中、近いと思った映画は[[🎞️『セッション』]]だ。教師の高圧的なシゴキ、それに対して学生たちが順応するか脱落するか、という構図は似ている。もちろん後発である[[🎞️『セッション』]]のほうがそれを更に誇張して描いているが。
アメリカ人のハングリー精神と言うか、偉大(Great)になることへの強迫観念は50年を経ても変わらない。
両作とも、教師のシゴキに耐えるために恋人と過ごす時間についての葛藤が描かれる。将来の成功か、現在の(幸福な)生活か。
[[🎞️『セッション』]]のアンドリューはあっさりと恋人を切り捨ててみせることで狂人性を強調して描くが、[[🎞️『ペーパーチェイス』]]のハートは最後まで引きずるところがよりリアルだ。
偉大になることへの強迫観念から、必然的に落伍者への視線も厳しい。
ケビン([[ジェームズ・ノートン]])は高い写真記憶能力を持つ才人であるが、ディベートが重視されるアメリカの法曹界では圧倒的な記憶力よりもアドリブを要する思考力が物を言う。
日本型の教育であればかなりの高みに登れそうなケビンであるが、その結末はなかなか悲惨だ。そんな彼が脱落し、彼が残したたった3ページのノートに対するハートの反応も、ある種の諦めも込められたものだろうが、残酷である。
たとえ人間性を削ぎ落としてでも成功・勝利しなければならない。
そんなアメリカ人の、とりわけエリートたちの国民性をまたまざまざと垣間見た気分だ。この気質が第二次[[👤ドナルド・トランプ]]政権に繋がっている、という意味では[[🎞️『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』]]とも接続したくなる一作だった。きっと、あの厳しくヒリついた教室から、[[ロイ・コーン]]も生まれたのだ。
## 情報
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