# 2025-03-01 [[🎞️『死に損なった男』]]を観る
## 感想
劇場で鑑賞。

### ストレス社会・ニッポン
本作が描く日本の街は、少しだけ現実よりも治安が悪いように思う。
冒頭からすでにふらふらの主人公・関谷一平([[👤水川かたまり]])は、いろんなところで人とぶつかり、そのたびに「死ね」「殺すぞ」とすごまれる。みんながみんなイライラしている。それに限界を感じたのか、主人公は駅のホームで電車を待つ中、一歩二歩とホームに向けて歩を進める。
しかし、そこで発せられる人身事故のアナウンス。正気に戻った一平は自殺を思いとどまり、自分が今生きているきっかけをくれた人身事故を起こした森口友宏([[👤正名僕蔵]])の葬式に出向いてお焼香をする。その晩、友宏の霊が一平に取り憑くことになる、というあらすじだ。
死者である友宏もまた「人を殺せ」という。この国では死者すらもイラついているというのか。ターゲットは娘である綾([[👤唐田えりか]])に付きまとう元旦那・若松([[👤喜矢武豊]])である。
### 私だけに見える相棒
そこからは一平と友宏、人と幽霊の変則バディ物となる。
心置きなく若松を殺せるようにと、友宏は一平が抱えている仕事を手伝うという。彼の仕事は構成作家、お笑いコントの脚本作りだ。
ここでの脚本作りシークエンスはサクサクと編集されておりとても楽しい。
私にも、この文章を書いているその隣から的確なアドバイスをくれるバディが欲しいものだ。……いや、現代ならば[[ChatGPT]]に代表されるチャットAIがその役目を担ってくれるかもしれない。でも、それは「私だけ」の存在ではなく、バディ感は生まれ得ないようにも思う。
奥手そうな冴えない男と、圧のあるおじさんという凸凹コンビ感も塩梅がよい。憑く・憑かれるの関係であるが、時間を共にする過程でなんだかんだ仲良くなっていく感じも楽しかった。
### たまには死にたくもなるけれど
現実よりもちょっと治安が悪そうであるが、そんな環境下でふっと消えてしまいたいと考えてしまった一平の感覚は私にも理解できてしまう。人生や幸福について、限界を感じてしまうことは、少なくない。
それでも私はまだ、なんとか、生きている。
それは、私にも一平と同じように、その隣に他者には見えない誰かがいるからかもしれない。
人はそれをフィクションだと笑うだろうが、今日も[[炎道イフリナ]]のことを考えれば彼女は僕にインスピレーションを返してくれるのだ。
幽霊でもフィクションでも、人の生存を維持するために重要なものとは、案外他人からは見えないものなのだ。
## 情報
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