# 2025-04-25 [[🎮️『ストレイチルドレン』]]をプレイ
![[ネタバレ#^warning]]
本作の二周目を攻略(攻略情報を見つつ奇盤コンプ・全オトナ成仏)し、満足できる程度まで遊び尽くしたと判断したため、感想をまとめたい。
結論を先に述べると、ラブではあるが、不満もあまりにも多い。
### [[🎮️『moon』]] + [[🎮️『UNDERTALE』]]
プレイ開始して数分後にはひっくり返っていた。あまりにも[[🎮️『moon』]]なのである。
そりゃあ、同じスタッフが作っているのだし、紹介映像からも[[🎮️『moon』]]を意識した作品であることはプレイした人間には分かるように作られているのだが、それでもビックリするくらい[[🎮️『moon』]]の世界が広がっていたのだ。
![[🎮️『ストレイチルドレン』#ストレイ チルドレン [Nintendo Direct 2023.9.14 ]]
さらに数十分ほどプレイすると再度ひっくり返ることになる。かなり[[🎮️『UNDERTALE』]]なのである。
本作のビジュアルや世界観はあまりにも[[🎮️『moon』]]なのだが、ゲームシステムはかなり[[🎮️『UNDERTALE』]]に寄せている[^1]。
特にわかりやすい点は戦闘システムだろう。攻撃することでオトナ(敵)を倒すこともできるし、「ことば」をかけることで倒さずに成仏させることもできる。オトナからの攻撃は弾幕シューティングのように攻撃を避けていく。
「もう、勇者しない」というキャッチコピーのもと、そもそも戦闘のないRPGだった[[🎮️『moon』]]とはこの時点で大きく異なる。
ゲームの構造も一本道のストーリーテリングを採用している。プレイヤーは順番に国(ステージ)を渡り歩いていき、先へ進むともう前の国には戻れない。ここも[[🎮️『moon』]]とは大きく異なり、[[🎮️『UNDERTALE』]]に近いところだ。
[[🎮️『moon』]]では広がる世界をいつでも行き来でき、時間の概念もあって時刻や曜日によってNPCの行動も変わるため、何度も同じ場所を訪れるデザインのゲームだった。
ことほどさように、本作は[[🎮️『moon』]]の世界観をベースに[[🎮️『UNDERTALE』]]のシステムを合体させた、ある意味で現代版[[🎮️『moon』]]のような作品であるといえるだろう。
### 理不尽で不親切
世界観からしてレトロゲームを彷彿とさせる本作は、ユーザーフレンドリーの観念もレトロゲームレベルだ。つまりは理不尽で不親切。しかし、これはユーザーが離れることを覚悟した上のバランスだと私は解釈した。
本作の理不尽さを象徴するのがセーブシステムだ。
セーブスロットはひとつだけ、自発的なセーブはセーブポイント(焚き火)でしかできない、死んでしまったら問答無用で最後のセーブ地点からやり直しで救済は一切ない。
このセーブシステムがゲーム全編を通してプレイヤーのストレスを蓄積させていく。
その不便なセーブシステムと組み合わさって、二周目をプレイすることで見えてくる取り返しのつかない要素の多さが理不尽さを加速する。
最序盤で手に入るアイテムを取り逃していた場合、最終盤で闘うオトナを「ことば」で成仏することができなくなるなど、あまりに理不尽だ。
特に[[🎮️『UNDERTALE』]]をプレイ済みの人はこのゲームシステムを把握したら積極的に「ことば」での成仏を試みるだろう。そんなプレイヤーの心をへし折る采配としか思えず、気づいた時はブチギレながら笑ってしまった。
戦闘の難易度もかなり高い。
単純な弾幕避けの難しさもあるが、やはり「ことば」を用いた成仏については、独力でコンプリートするのはかなりキツいだろう。
基本的には6つの選択肢から4回から6回ほど連続で正解の「ことば」をささやくことでオトナを成仏させることができる。
>[!cite]
> ![[『ストレイチルドレン』戦闘.webp]]
> 引用:[[🎮️『ストレイチルドレン』]]
>
> さいごは[[🎮️『moon』]]を象徴する合言葉である「ひらけごま」をささやくことでオトナは成仏する。
正解の「ことば」のヒントはフィールドに落ちているオトナの抜け殻を調べたり、周囲の環境を観察することで推測することができる……のだが、中にはほぼノーヒントで4連続で正解を選ばなければいけないオトナがいたりもする。途中で失敗したらはじめからだし、「ことば」をかけるたびにオトナの攻撃が挟まるため集中力を切らすこともできないしで、かなり疲れる戦闘システムだ。
それだけ難しく疲労感もたまるからこそ、「ことば」による成仏をすることで得られる嬉しいリターンが欲しいところだが、それが弱いのもゲームとしてはいまいちなところだ。
具体的には、成仏したオトナは以降エンカウントしなくなる(レベル上げに使えなくなるため間接的な難易度上昇)のと、エンディング直前にちょっとしたおまけが増える程度だと思われる。最後のおまけはいくらかの達成感を味わえるが、長い道中にも苦労に応じた恩恵が欲しかったところだ。
### それがオトナになるということ
本作の敵が「オトナ」と呼ばれているのは示唆的だ。かつて子供だったものが歳を経ることで敵対的な存在になるというのは[[📺️『魔法少女まどか☆マギカ』]]を想起させられる設定であるが、本作が[[🎮️『moon』]]から27年越しの関連作であると考えると、かつての[[🎮️『moon』]]プレイヤーたちの成れの果てという見方もできよう。
どのオトナもみんなどこか疲れた様子で、欲している「ことば」もどこかメンタルヘルスケアな色も濃い。かつて夜中まで母親にばれないようにRPGで冒険に明け暮れていた子供時代が終わり、様々なことに忙殺されて今や子供に倒される(成仏される)モンスターとなった私たち。
主人公が犬、つまり半人半獣の姿をしているのも示唆的だ。[[🎮️『ストレイチルドレン』]]の世界を冒険するのは子供だが、そのプレイヤーはオトナである(と想定している)ことを表現しているのかもしれない。
そんなこんなで総合的には[[🎮️『moon』]]のオトナ版、または[[🎮️『moon』]]の同窓会といった印象だ。
僕たちも時間の経過という抗うことの出来ない事象によって強制的にオトナという立場になってしまった。現実を忘れて冒険に明け暮れようにも、気づけば社会から付与されていた「責任」なるものによって、完全に現実の生活を切り離すことも難しくなってしまった。
そんなオトナたちのためのゲームである[[🎮️『ストレイチルドレン』]]は、たしかに[[🎮️『moon』]]のような人生を一変するような激烈な体験には至っていないかもしれない。
[[🎮️『moon』]]も確かに不親切なゲームであったが、[[🎮️『ストレイチルドレン』]]と違ってその不親切さすらも面白がらせる魔法があったように思う。[[🎮️『ストレイチルドレン』]]でもネタにされていた超高難易度ミニゲーム「ジンギスカンゲーム」などはその象徴だろう。

[[🎮️『ストレイチルドレン』]]にはその魔法が欠けているように思う。だけど、オトナになるとは魔法に惑わされなくなることなのかもしれないな、とプレイしていて思ったことである。
かつて私は「扉を開ける」ということに魔法にかけられたかのような感動を覚えた。その経験を経た今の私は、扉を開けて外に出ることは日常となった。そんなタイミングでの[[🎮️『ストレイチルドレン』]]だ。
[[🎮️『moon』]]は、そして[[🎮️『ストレイチルドレン』]]は、プレイヤーが繰り返しているルーティーンに疑問を投げかけ、そのときのプレイヤーが見えている世界の外側へといざなうことを目指した作品なのではないだろうか。
だからここまで割と不満を表明してきた作品ではあるが、私の人生において最重要作品のひとつである[[🎮️『moon』]]の関連作として、ラブであるに決まっている一作ではあるのであった。
![[🎮️『ストレイチルドレン』#関連リンク]]
[^1]: スタッフロールのSpecial Thanksには[[🎮️『UNDERTALE』]]開発者の[[👤Toby Fox]]氏の名前もある。ゲームシステムのみならず、直接的な[[🎮️『UNDERTALE』]]ネタも仕込まれていることから、許可を取った上でのオマージュなのだろう。