# 2025-04-28 [[🎞️『けものがいる』]]を観る
![[ネタバレ#^warning]]
## 感想
劇場で鑑賞。

### 難解SFはもう一回観たくなる
やや難解なアート系SF映画だ。奇っ怪な設定や演出に振り落とされないようにしがみついた先に、第三幕にやっと猛烈な面白さが見えてきた。
自分の理解のために簡単に設定をまとめたい。
ベースとなる舞台は2044年。AI管理された社会。
その時代の有意義な仕事はAIに適応した人間しか就くことができない。AIに適応するためには、DNAレベルの感情の汚染を取り払う必要がある。つまりは感情の消去。
だから前世の記憶を辿りながら主人公**ガブリエル**([[👤レア・セドゥ]])のトラウマを見つける旅が始まる。
前世パートは==1910年の大洪水に見舞われたパリ==と、==2014年の3月17日にマグニチュード4.4を記録した地震に見舞われたロサンゼルス==。
どの時代もガブリエルは[[👤レア・セドゥ]]が、彼女に接近する男性を**ルイ**を[[👤ジョージ・マッケイ]]が演じる。
時代を超えて複数の人物を同じ役者が演じることで複数のエピソードを統合させる演出は[[🎞️『クラウド アトラス』]]を想起させられる。
それぞれの時代でガブリエルとルイは同じような運命をたどる。ひとまず逢瀬を重ねる、とだけは言ってもよいだろう。この二人が出逢わなければ何も始まらない。そして二人はどうなる?
それが「運命」であることを示すように、各時代で同じモチーフが現れる。鳩、占い(未来予知)、人形、そして水没だ。
そんなふたつの前世をも含めた運命的なふたりの人生を追いながら、2044年のガブリエルは感情の消去をすることができるのか? というのが話の筋だろう。この筋を堅く握っておかないと一見して繋がりが見えてこない別の時代への映画的ジャンプに振り回されかねない。
### フランスSF映画の味わい
ちょうど本作のような振り回され方をした映画を最近観たばかりだ。それは同じくフランス映画の[[🎞️『ジュ・テーム、ジュ・テーム』]]だ。
>[!check]
> タイムマシンの実験失敗により主人公はランダムな時間移動に見舞われる、そんな時間のカオスを描いた作品だ。
>
> - [[2025-03-20 🎞️『ジュ・テーム、ジュ・テーム』を観る]]
[[🎞️『ジュ・テーム、ジュ・テーム』]]が描く「タイムトラベル」も、[[🎞️『けものがいる』]]が描く「前世」も、科学的な考証という面白みを追求した設定とは私には思えなかった。そうではなく、描きたい人間の「何か」(後悔・業・運命とか)をビジュアル的に表現するための舞台装置という印象だ。
だからリアルさよりも画的な象徴性が重視されているように思う。特に[[🎞️『けものがいる』]]において「感情の消去」のために行われる耳に針を突っ込む表現は[[ロボトミー手術]]を想起させる。そこには確かに2025年の基準から感情の肯定をしているように映るが、はてさてこの映画の結末やいかに……。
映画の構成も特殊ながら、時に変なショットが挟まることもあって混乱させられる本作。
ファーストショットからグリーンバックの背景の中でアクションをさせられる[[👤レア・セドゥ]]が映されて「そういう映画です」という宣言のようだ。それら映画的なカオスが終盤に統合されたように思える地点に至ってようやく面白くなってきたが、それには2時間26分の上映時間は少々長く感じてしまった。
そうそう、これからこの映画を観る方にひとつアドバイスを。
本作鑑賞時は、[[スマートフォン|スマホ]]の電源を切らずに、マナーモードにしておいたほうが良いだろう。理由は伏せるが、私は間に合わなかった、とだけ。この奇っ怪な作品に相応しいある演出が待っている。
## 情報
![[🎞️『けものがいる』#予告編]]
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