# 2025-05-24 [[🎞️『教皇選挙』]]を観る ## 感想 劇場で鑑賞。 ![Xユーザーのこーしんりょー@SpiSignalさん: 「『教皇選挙』観た。冒頭から早足に歩くローレンスの鼻息の音が印象的。たとえ密室に閉じ込めようとしても漏れ出てしまう「流れ」を読むことが、凝り固まった伝統や複雑化した現代を前にかろうじて正しさ(と信じることができること)を導くのではないだろうか。」 / X](https://x.com/KO_SHIN_RYO/status/1926112570852708662) ### ロングラン 改めて確認したら日本公開は3月20日。私が鑑賞した日も2ヶ月を超えたにも関わらず[[📍TOHOシネマズ シャンテ]]では最も多く回数がかかっていた。 [[アカデミー賞]]では脚色賞を受賞したものの、日本でメジャーなスターの不在や宗教的題材から、あまり日本でヒットするイメージがなかっただけに、このロングランはなかなか観に行けなかった私としては助かった。 劇場公開中にフランシスコ教皇が逝去され、本作の題材となっている[[コンクラーベ]]が行われたこともこのロングランに寄与したことだろう。しかし、どうやらそれ以前からこの手の洋画の中ではかなりのヒットと呼べる興行だったようだ。 ### 遠い世界でも事情は同じ 日本に暮らしている身としては[[コンクラーベ]]自体に馴染みがない。地理的にも文化的にも遠い世界のお話のように思う。実際、この映画で描かれる[[コンクラーベ]]の伝統的な振る舞いは興味深く、たとえば教皇の私室を赤い紐や蝋で封印する様子などは厨二病的な魅力がある。 [[コンクラーベ]]において、この映画で重要なポイントは、それが密室下で行われる選挙であるという点。選挙の参加者は基本的に外界との接触が禁止される。そんな環境下で、短期的に次の教皇を決定しなければならないという独特な緊張感が本作の根底にある。 しかし、それはあくまで選挙であるという点においては我々にも身近に感じられる。保守派/リベラル派のように二派に分かれての支持集めなどは分かりやすく政治選挙と重ね合わせやすいところだ。遠い世界のお話のようでも、そこにいるのは同じ人間なのだ。 ### 風穴 私は本作を==「流れ」についての映画==だと感じた。 ファーストショット、印象的なのが主人公である**ローレンス**([[👤レイフ・ファインズ]])の鼻息だ。鼻息が出るのは教皇が逝去されたという報を聞いて早足に向かっているからだろう。身体は酸素を求めて呼吸が大きくなる。内界と外界で空気が循環する、つまり「流れ」の表現だ。 そして[[コンクラーベ]]本番はまさに外界を遮断した密室で行われる。 しかし、完全な密室を作り上げることは不可能であり、様々な暗躍による人の出入りがあり、また音や振動といった物理現象を遮断することはできない。この密室には風穴がある。そして、その風穴は凝り固まった「伝統」にも開きうる。本作は、そのことを描こうとしていると感じた。 特に分かりやすいのが女性(あるいは非男性と言ってもよい)の扱いだ。 教皇候補になるには叙階された聖職者(司祭または司教)であることが条件のひとつであるが、カトリック教会では教義・伝統に基づいて女性の叙階は認めていない。 それ故に本作における女性の出番は少ない。それにも関わらず、わずか10分の出演でありながら[[アカデミー賞]]助演女優賞に[[👤イザベラ・ロッセリーニ]]がノミネートされたことから推察できるように、==女性の存在が大きな鍵となっている作品==である。 これまで透明化されてきた女性(修道女)たちの働きを描いたことで、究極の男性社会である枢機卿団が何者によって支えられていたのかが垣間見える。[[コンクラーベ]]が終わり、ローレンスが目にするものが、これからの未来に続く流れをもたらす「風穴」だったのではないかと思う。 ## 情報 ![[🎞️『教皇選挙』#予告編]] ![[🎞️『教皇選挙』#主要スタッフ]] ![[🎞️『教皇選挙』#関連リンク]]