# 2025-07-02 [[🎞️『罪人たち』]]を観る ![[ネタバレ#^warning]] ## 感想 [[📍グランドシネマサンシャイン 池袋]]で鑑賞。[[IMAX#IMAXレーザー/GTテクノロジー|IMAXレーザー/GTテクノロジー]]版。 ![Xユーザーのこーしんりょー@SpiSignalさん: 「『罪人たち』観た。故郷に帰ってダンスボールを開く。たった1日の夢の実現はドラマに溢れていて、しかし別の映画ジャンルが交差したために悪夢に変わる。ある対象を根絶やしにしようとする魔と闘ってきたからこそその種は、文化は今も生き残っている。A級映画の着想でB級映画を練り上げた傑作。」 / X](https://x.com/KO_SHIN_RYO/status/1940416322078417265) ### 久々にIMAXレーザー/GTテクノロジーを堪能 本作は米国公開された4月のタイミングでは日本に配給されるかどうか不明だった。少なくともアナウンスはなかったはずだ。 それが記録的なヒットを受け、「緊急劇場公開」という形で日本での上映が決定した。 本作は[[IMAX]]フルサイズ、つまり1.43:1のアスペクト比で映写されるシーンが一部存在する。それにもかかわらず日本では配信スルーで自宅のショボいモニターでしか観られないとなってはたまらない。 ひとり部屋で暴動を起こしかねない事態だったが、ありがたいことにそれは回避された形だ。 ところがどっこい、6月20日に公開された本作だが、翌週の金曜からは[[🎞️『F1/エフワン』]]に[[📍グランドシネマサンシャイン 池袋]]の[[IMAX]]シアターを取られてしまい、またもや暴動突入前夜に突入。 ![Xユーザーのこーしんりょー@SpiSignalさん: 「うげえ、グランドシネマサンシャイン池袋での『罪人たち』IMAX上映が明日からなくなっている。『F1/エフワン』は人が入るだろうからしょうがないけれど、一週で終わられるとは思わなんだ。」 / X](https://x.com/KO_SHIN_RYO/status/1938151731655020834) しかし平日は一回だけ夜の回でやってくれたため二度目の危機も回避された。人死にがでなくて本当に良かった。せっかく日本で二館しかない[[IMAX#IMAXレーザー/GTテクノロジー|IMAXレーザー/GTテクノロジー]]シアターなのだから、その性能をフルに発揮できる作品を優先してほしいものである。 そんなわけで久々に[[IMAX]]フルサイズの映像を[[IMAX#IMAXレーザー/GTテクノロジー|IMAXレーザー/GTテクノロジー]]シアターで堪能できた。しかも本作はそれに加えて、非[[IMAX]]画角のシーンも[[ウルトラ・パナビジョン70]]によるアスペクト比2.76:1という超横長のフォーマットを採用しており、二つの画角の切り替わりで魅せる演出にもしびれた。 ### ジャンル渋滞 [[👤アル・カポネ]]のもとで働いていたという元ギャングの兄弟である**スモーク**&**スタック**(いずれも[[👤マイケル・B・ジョーダン]]が演じる)。二人が故郷であるミシシッピ州の村に帰省し、禁酒法により禁じられていた酒と音楽を振る舞うダンスホールをオープンする、という一日を描く。 お話としてはほぼ一日の出来事である。その中で敷地の購入、スタッフの雇用、オープンからその後の地獄のような終わりまでが描かれる。 オープンに至るまでに仲間を集める前半パートが結構長く、まるで[[🎞️『七人の侍』]]のよう。そうして集められた各人物たちにはしっかりとしたバックボーンが描かれ、彼らがダンスホールに集う後半まで、それぞれの人物にドラマが用意されている。 アメリカ南部の[[ジム・クロウ法]]下のミシシッピ州では、黒人やアジア系といった有色人種は生活において様々な制限が課せられている。その中で自由を求めた同胞を集めていく中での各人物間の関係性の積み重ねが終盤の展開に効いてくる。 ダンスホールをオープンしてからは青年**サミー**([[👤マイルズ・ケイトン]])を中心とした音楽劇になる。彼が奏でる音楽は特別で、過去と未来、そして「魔」すらもその空間に引き寄せることになる。 ここでの長回しによる歌唱&ダンスシーンは間違いなく本作の白眉だ。ブルース音楽を中心とした黒人(とその場に集う者たちの)文化が時代を超えてダンスホールに集結する。音楽というものが持つ民族性と、時代を超える普遍性とを讃える感動的なショットである。 そして、クライマックスには宣伝にある通り、サバイバル・ホラーに一変する。 ### 文化を奪う者たち・根絶やしにする者たち 盛況するダンスホールに現れたのは[[吸血鬼|ヴァンパイア]]。 それもクラシカルな設定の[[吸血鬼|ヴァンパイア]]で、陽の光とニンニクが弱点で、心臓に杭を打たなければ殺せず、そして住人に招かれなければ家屋に入れない。 そんな[[吸血鬼|ヴァンパイア]]がブルース音楽に対してアイルランド民謡を歌い、踊りながら、ダンスホールの者たちを次々と殺し、仲間として取り入れていく。 [[吸血鬼|ヴァンパイア]]の目的はサミーの歌、魔を引き寄せる音楽だ。 つまりは黒人文化であるブルース音楽を奪おうとするということで、これは[[文化盗用]]と[[文化的同化]]のメタファーだ。 さらに[[吸血鬼|ヴァンパイア]]は[[クー・クラックス・クラン|KKK]]の白人をも取り入れる。しかしその人種差別的な目的は踏襲しない。 それは[[吸血鬼|ヴァンパイア]]にとって「区別」のレイヤーが生者・死者にあるからだ。人種は関係なく、殺すことでその者を既存コミュニティから奪い取る。 こちら側に付く(=死者になる)限りは、人種にこだわりはない。ここが単純な[[クー・クラックス・クラン|KKK]](人種差別主義者・根絶やしにする者たち)とは異なる本作の複雑さだ。 [[吸血鬼]]モノというジャンルホラーを通して、黒人文化の剥奪の歴史を描く。 類似作としては[[🎞️『NOPE/ノープ』]]があるが、どちらも[[IMAX]]フルサイズを導入してスペクタクルを重視している点も共通するところが面白い。 映画という「見世物」を通して、文化史という深みをぶつける。そんな熱さが私を惹きつけてやまない。 ## 情報 ![[🎞️『罪人たち』#予告編]] ![[🎞️『罪人たち』#主要スタッフ]] ![[🎞️『罪人たち』#関連リンク]]