# 2025-08-02 [[🎞️『この夏の星を見る』]]を観る
## 感想
劇場で鑑賞。

### 青春夢物語
今年一番泣いちゃったかも。自由を縛られた登場人物がそれでも「やりたいことをやる」という姿。そこに涙腺を刺激される身体になったのかも知れない。
2020年、[[コロナ禍]]。
緊急事態宣言により学校生活を送れなくなった少年少女たちが、それでも出来ることをしようと奔走する。
ほんの5年前の出来事だ。あの時期に学生だった人たちはその前後の世代とはまったく異なる日々を送ったことは想像に難くない。ずっと前の世代である私としては、あの時期の特殊な学校生活のシミュレーターとしても本作は機能した。
たとえ社会が止まっても、個人の気持ちを止めることなど何人ともできやしない。
本作の物語の発端となる「リモートによるスターキャッチコンテスト」を企画した**溪本亜紗**([[👤桜田ひより]])は、天文学部部室である化学室の黒板にデカデカと「**何ならできるか?**」と板書しそれを眺め考える。
年老いた私たちが青春映画に爽やかさを覚えるのは、若さ(あるいは無知)ゆえに「できないこと」を知らない者たちが、知らないからこそその可能性を模索してしまうという愚かさがあるからだ。現実を知ったつもりになった者は、もう、愚かではいられないのである。
だからこそ、愚かでなければリーチできない景色があったのではないか、という夢物語が青春映画にはある。それは==未来から過去に向かって見る夢==なのかもしれない。
そんな若者たちの愚直さに感化され、その幸福を祈ってしまうのは、彼らにとってのこの世の理不尽はもう[[コロナ禍]]だけでいい、という気持ちがあるからだろう。
それはまだ[[コロナ禍]]当時の記憶がはっきりしている現在だからこそ抱ける気持ちかもしれない。
だからこの映画の賞味期限はそんなに長くないかもしれない。たとえば20年後の若者にはいまいちピンとこないものを描いているのかもしれないとも思う。しかし、青春映画とは本質的にそういうものなのかもしれないな、とも思う。
愚鈍な大人に比べれば、多感な子供は時代によってその感性はまったく異なるものなのかもな、と。
### この映画のここを見る
以上、テーマ的な部分について語ってきたが、その他の要素についても簡単に。
なんといっても撮影の素晴らしさに触れたい。
茨城県(地方)、東京都(都心)、長崎県・五島(離島)と同じ日本でも異なる景色を有するロケーションを舞台としており、それぞれに印象に残る画を残している。
また、亜紗にとっての心象風景である地球で振れる[[ニュートンのゆりかご]]のイメージを効果的に要所で挿入され、亜紗の閃きを視覚的に語ってみせたのも印象的だ。
スターキャッチという競技も映画的な面白さに寄与していた。
指定された星を望遠鏡でいかに速く捉えられるかという競技であるが、望遠鏡のセットから課題となる星の名前のコール、それと同時に画面に映る全員が一斉に動作するアクションは、まるで[[『ちはやふる』シリーズ]]の競技かるたを想起させる。この静と動のメリハリには画的な快楽があった。
セリフや演技テンションには少々漫画的なデフォルメが効きすぎておりやや違和感のある箇所もあるが、ここはチューニングできる範囲だった。
どのキャスティングも素晴らしかったが、個人的にひばり森中学校チームの[[👤黒川想矢]]と[[👤星乃あんな]]のアンサンブルが良かった。
特に[[👤星乃あんな]]は長編映画デビュー作だった[[🎞️『ゴールド・ボーイ』]]に引き続いての好演で、またもその美少女ぶりにノックアウトされた。これからも出演作を追いかけたい。
## 情報
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