# 2025-08-10 「ウォン・カーウァイ 艶めく熱帯夜2025」を観る
[[📍新文芸坐]]にて、2022年に日本で公開された[[👤ウォン・カーウァイ]]監督作の4Kリマスター版三作を扱うオールナイト上映に参加。
当時から観たいと思っていたものの機会がなくまだ全作未見。三作それぞれに短めに感想を残す。
## [[🎞️『恋する惑星』]]

恋人にふられたばかりの二人の警官がそれぞれに新しい女性と恋に落ちる恋愛映画だ。
この警官二人、ほとんど交わらない。単に同じお店の常連というだけであり、後半から[[👤トニー・レオン]]演じる二人目の警官のエピソードに移って以降、前半の登場人物がいつか関わってくるのだろうかと思いきやそんなこともなく終わった。
冒頭の捕物アクションからコマ落としを活用したスタイリッシュな画作りが目を引く。躍動感のあるカメラワークが切り出す4人の男女の瑞々しさがひたすらに眩しい。……のだが、後半エピソードのヒロインであるフェイ([[👤フェイ・ウォン]])の行動は完全にストーカーのそれ。
ひょんなことから手にした鍵で日勤中の警官の家に不法侵入して色々とするのだが、ドン引きしつつもキュートな姿に目が離せなかった。家を勝手に掃除されるのはたまったものではないが、そのことに気づかない失恋したばかりの男には日常にまた彩りが戻ってきたように見え、そこがなんともロマンチック。
![[🎞️『恋する惑星』#関連リンク]]
## [[🎞️『天使の涙』]]

夜の[[🎞️『恋する惑星』]]。元々[[🎞️『恋する惑星』]]に入れるつもりだったエピソードを単独作にした経緯があり、姉妹作として共通点は非常に多い。
殺し屋とそのパートナー、そのパートナーが根城とするマンションの管理者の息子と彼が出会った娘。本作も二組のパートナーのそれぞれの恋愛(?)模様が描かれる。
こちらは二つのエピソードが交互に描かれ、それぞれの人物がより直接的に人生を交わらせたりもするのだが、それも薄っすらとしたものだ。香港という街ですれ違う多くの人たちと親友になったり恋に落ちたりする――そんな普遍的な出会いについての映画としてこのニ作を見た。
こちらも当然、女性はいずれもクセが強い人物として描かれる。とはいえ男性側も相当におかしい人物として描かれているのでこちらの方がバランスは取れているかも。
本作は4Kレストアに伴って、当初構想したものの実現できなかった[[シネマスコープ]]に画角を変更。
[[🎞️『恋する惑星』]]でも人物を斜めに収めるショットが印象的だったが、画面が横に広がったことでよりその構図がダイナミックに映る。あまりにも格好いい画が多かったので、元は[[シネマスコープ|シネスコ]]でなかったと後から知ったときは正直驚いた。
![[🎞️『天使の涙』#関連リンク]]
## [[🎞️『花様年華』]]

[[👤ウォン・カーウァイ]]といえば本作が代表作という印象があったので、今日の一番の目的はこちら。
前二作が20代の男女を捉えた若々しくスタイリッシュな映像美の作品だったのに対し、既婚者同士の関係を描く本作は落ち着いたカメラワークでひたすら二人を美しく捉える。
1960年代の香港を舞台としており様々なチャイナドレスを着こなす[[👤マギー・チャン]]の美しさに惚れ惚れ。もちろん[[👤トニー・レオン]]の色気は言うまでもない。
この三作目にして、全作通して鏡の反射を演出に用いたショットの多さを確信。
前二作は動きの多いカメラワークに鏡というフレームがあることで視覚的な面白さを強化していたが、本作ではより登場人物の身動きの取れなさを象徴する檻としての機能を狙っているように感じた。
どうやら次作の[[🎞️『2046』]]が本作の続編とのことなので、こちらは個人的に観ておきたい。
![[🎞️『花様年華』#関連リンク]]