# 2025-08-26 [[📘『本当にためになるゲームの歴史 1本のゲームが億を生む仕組みのすべて』]]を読む
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> ![[📘『本当にためになるゲームの歴史 1本のゲームが億を生む仕組みのすべて』#概要]]
## 感想
### ゲームの歴史
著者の[[👤岩崎啓眞]]氏のことを知ったのは、[[講談社]]から出版された[[📘『ゲームの歴史』]]の問題点を指摘するブログ記事だった。
実際にゲームの制作現場に長らく関わってきた経験に裏付けされた説得力ある指摘の数々に、発売当初に一巻を読んだ私も痺れたものだ。
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> [[📘『ゲームの歴史』]]全三巻は多くの問題が指摘され、出版から4ヶ月後に販売中止となった。図書館などで借りて読むしかないが、[[👤岩崎啓眞]]氏の批判ブログから今でもその問題点を確認することができる。
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> - [書籍「ゲームの歴史」について(1) | Colorful Pieces of Game](http://www.highriskrevolution.com/wp/gamelife/2023/02/15/%e6%9b%b8%e7%b1%8d%e3%80%8c%e3%82%b2%e3%83%bc%e3%83%a0%e3%81%ae%e6%ad%b4%e5%8f%b2%e3%80%8d%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a61/)
そんな著者がずばり「ゲームの歴史」をタイトルに掲げた書籍を出したことになる。しかもその修飾句として「本当にためになる」と付けているのがなんとも示唆的だ。
### ビジネスモデル
「ゲームの歴史」を語る難しさを知る著者は、本書において語りの領域をぐっと絞ることでそのハードルを下げている。本書が着目する領域とは、**商用ビデオゲームのビジネスモデル**だ。
当たり前だが、ゲームクリエイターは開発費を回収しなければ次のゲームを作る事はできない。
だから開発費をどのように回収するか、を考えなければならない。そのための商売のやり方の「型」がビジネスモデルだ。そして、ビジネスモデルはゲームの形を決めてしまうという。
つまり、本書は「なぜあのゲームはこういう作りだったのだろうか」という疑問の答えをビジネスモデルに求める試みだ。そこには一人のユーザーとしてゲームの内容と対面しただけでは得られない知見があった。
このサイトの主要な話題のひとつであるアダルトゲームについては直接的に語られていないが、応用は可能だ。
特に「第3章 B2B買い切りの時代」と「第7章 B2Cの時代、売り切れがない時代」の2つの章がオススメだ。時々話題となるメーカーと流通の関係や「マスターアップ」の意味、ダウンロード販売が当たり前になったことで可能になったゲーム形式などについて考えやすくなる。
### 応用例
たとえば絶賛テレビアニメ放映中の[[『9-nine-』シリーズ]]。
あらかじめ四作に分けて順次リリースしていくスタイルについて、これがやりやすくなった理由のひとつとしてダウンロード販売が当たり前になったことが挙げられるだろう。
パッケージ販売だけではあらかじめ計画された短期的なシリーズ展開を実行するには障害が多い。特に、シリーズ途中で気になったユーザーがいたとしても品切れによって初回作が手に入らなければ参入することができないという問題が挙げられる。
しかしダウンロード販売があれば在庫の心配をする必要がなく、いつでも新規参入できるようになる。
このようにダウンロード販売によってやりやすくなった「エピソディックゲーム」(シナリオ分割型のゲーム)のビジネスモデルはユーザーとメーカー間でWin-Winであるといえる。
ユーザーからすればゲームが合わなければそこで購入することをやめればよいし、メーカーからすれば資金の回収を早めることができるからだ。
以上のようにゲームの分析における発想の幅を広げるための補助線が数多く得られる一冊だ。
わざわざアダルトゲームに引き寄せずとも、どのようにして韓国がオンラインゲーム大国になったのかの歴史的経緯など非常に面白いトピックも多い。少なくとも、[[📘『ゲームの歴史』]]よりも本当にためになる読書だった。
## 情報
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