# 2025-08-31 [[🎞️『九龍ジェネリックロマンス』]]を観る
![[ネタバレ#^warning]]
## 感想
劇場で鑑賞。

### 懐かしさをめぐるSF
原作は未読、映画と同時にメディアミックス展開としてTVアニメ版も放映していたそうだがそちらも未見。
とにかく私にとっていま大きなスクリーンで観たい被写体ナンバーワンである[[👤吉岡里帆]]さんの主演作ということで、作品概要は何も調べずに足を運んだ。
予告編はちらりと目にしていたが正直よく分からない設定だとは思っていた。「[[📍九龍城砦]]を舞台としたロマンスもの?」くらいに思っていたが、実際に城塞があった頃に日本人がそこに居ることにどれくらいリアリティがあるのだろうかと。
しかし作品を観たらすぐにそのあたりの疑問に答えてくれた。本作の舞台は[[📍九龍城砦]]を後に再現した「第二九龍寨城」という架空の場所で、その上空には人々の記憶を収集・管理する巨大建造物([[📺️『新世紀エヴァンゲリオン』]]のラミエルのような造形だ)が浮かぶ。
なるほど本作は記憶(とりわけ「懐かしさ」)をめぐるSFだったのだ。
そして1994年に解体された[[📍九龍城砦]]を懐かしさの象徴としてモチーフに用いている。
### [[👤吉岡里帆]]を堪能
物語の序盤は主人公である**令子**([[👤吉岡里帆]])と不動産屋の上司である**工藤**([[👤水上恒司]])とのロマンスが[[📍九龍城砦]]を再現した素晴らしいセットの中で描かれる。
しかし、令子は次第に記憶を持たない自分の存在に疑問を持ち始め、それが終盤まで物語を牽引するミステリーとして機能する。
[[👤吉岡里帆]]を観たい私にとっては彼女を中心としたロマンスや葛藤の演技を堪能。
特に工藤が幻視する過去の令子の姿は彼にとっての「懐かしさ」のフィルターがかかっており、[[📍九龍城砦]]の背景とともに美しく映像に収められている。これだけで個人的には100点だ。
ただ、[[👤吉岡里帆]]以外、というと言い過ぎかもしれないが、全体的な演技テンションやキャラクター造形には首を傾げてしまうところも多かった。
私が[[👤水上恒司]]を知ったのは[[🎞️『本心』]]であったがあまり印象が良くなかった。格好いいのだが演技が過剰気味で作劇上のミスリードを狙っていたのだろうかと余計なことを考えてしまうくらい一人浮いていたのだ。本作でも演技の過剰さは鼻につくところもあるが、本作の演出プランとしては外していない、という印象だ。
また、これは原作から継承している問題かもしれないが**小黒**([[👤花瀬琴音]])のキャラクター造形は実写でやるにはかなりキツい。いわゆる中国人風カタコト日本語を喋るキャラクターで、そのステレオタイプな表現も相当厳しいのだが、人物ごとに日本語と中国語を使い分ける本作の作劇の中で彼女のカタコト日本語をどう解釈すべきか掴みかねた。
### 私が感じた懐かしさ
本作の中盤から終盤におけるストーリー展開は私にとってかなり既視感のあるものだった。
ずばり「ゼロ年代エロゲーで見たことがある」というやつだ。
そもそも記憶を絡めたSFロマンスという軸がまさにエロゲーで好まれた物語の類型だ。
加えて、[[📍九龍城砦]]という「ひとつの固定化した舞台が重要な意味を持つ」という設定も、背景の使い回しが要求されるゲーム媒体でよく用いられる作劇テクニックであり馴染み深いものだった。
どういう展開を辿るのかはここでは伏せるが、本作のラストシーンはそれなりにエロゲーのプレイ経験があれば相当既視感がある画になっていると思う。
広がる草原に佇むふたり、その背後で起きるある事象、それに気を取られている男の隣でヒロインは――。
うーん、こうして抽象的に文字に起こしてみてもやっぱりどこかのエロゲーにありそうなクライマックスだ。
さらにその後のエンドクレジットの映像から、少し長めに用意されたポストクレジットまで、エロゲーのエピローグとして既視感のあるものだった。
そして、私がこれまで観た映画の中でもっともエロゲーの風味を感じた大好きな作品として[[🎞️『神回』]]がある。実は本作と[[🎞️『神回』]]は語ろうとしていることがかなり近く、個人的にはその発展版という印象が強い。
原作の連載時期などを考えればこのネタ被りはたまたまだろう。しかし、ある一人の男の妄執がより濃縮されたその気持ち悪さから、映画としてはやはり[[🎞️『神回』]]に軍配を上げたい。
## 情報
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