# 2025-10-20 [[📘『読書について』]]を読む
## 感想
>[!info]
> ![[📘『読書について』#概要]]
[[📘『実存主義とは何か』]]に続いて有名哲学者の読みやすい著作に触れようシリーズ第二弾。第三弾は未定。
>[!check]
> - [[2025-10-08 📘『実存主義とは何か』を読む]]
[[👤アルトゥル・ショーペンハウアー|ショーペンハウアー]]の主著である[[📘『意志と表象としての世界』]]はさすがに手も足も出ないだろうことから、彼の有名な随筆からその思想の方向性みたいなものを掴めれば御の字かと本書を選んだ。
そしたらこれがなかなかに面白い。結構笑えるタイプの一冊だった。
[[👤アルトゥル・ショーペンハウアー|ショーペンハウアー]]がどんな人物かあやふやな方は是非この名前でググっていただきたい。
おそらく検索結果の冒頭に彼の肖像写真が表示されるだろう。そのご尊顔を目にしてどう思われただろうか。私はその険しい表情と特徴的な禿頭から、率直に「雷親父っぽそうだな」と思った。
そうした印象から本書を読み始めると、まさに雷親父的な厳しい言葉が並んでいたので笑ってしまった。その厳しさは、(主に当時のドイツ人の)本の書き手と読み手に対して向けられる。
その主張はただ「本を読みなさい」という優しいものではなく、「ちゃんと書き、ちゃんと読め。そうでなければ害悪ですらある」とでも言いたげな勢いで、とにかく耳に痛い。
特に印象に残ったフレーズを3つ引用する。
>[!cite]
> 書く力も資格もない者が書いた冗文や、からっぽ財布を満たそうと、からっぽ脳みそがひねり出した駄作は、書籍全体の九割にのぼる。
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> 引用:[[📘『読書について』]](p.49、「著述と文体について」より)
この主張は[[スタージョンの法則]]を実に100年以上先取りしていると言える。
それに「からっぽ財布を満たそうと、からっぽ脳みそがひねり出した駄作」という悪辣な言い回しのパンチ力よ。
>[!cite]
> 凡庸な脳みその持ち主の著作が中身がなく退屈なのは、かれらの語りがいつもいい加減な意識でなされる、つまり書き手自身、自分の用いた言葉の意味をほんとうにはわかっていないせいかもしれない。
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> 引用:[[📘『読書について』]](p.68、「著述と文体について」より)
こちらは最近読んだ[[📘『読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術』]]でも同様の主張がされていた。
そちらでは自分が用いる言葉を疑え、わからないまま誰かが使った単語を流用するなといった文脈だった。もっとも効率的に伝わる言葉選びをするために辞書を引くことを怠ってはいけないという教えとして、合わせてインストールしたい。
>[!cite]
> 昔の偉大な人物についてあれこれ論じた本がたくさん出ている。一般読者はこうした本なら読むけれども、偉大な人物自身が書いた著作は読まない。新刊書、刷り上がったばかりの本ばかり読もうとする。それは「類は友を呼ぶ」と諺にもあるように、偉大なる人物の思想より、今日の浅薄な脳みその人間がくりだす底の浅い退屈なおしゃべりのほうが、読者と似たもの同士で居心地がよいからだ。
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> 引用:[[📘『読書について』]](p.146、「読書について」より)
あまりにも耳に痛い。古典そのものではなく解説書ばかり読んでいる私には致命傷である。有名哲学者の読みやすい著作に触れようシリーズ第三弾、きっとやります。
それにしても、書く者、読む者に対してここまで厳しい言葉を投げかける度胸そのものがすでに面白い。[[👤アルトゥル・ショーペンハウアー|ショーペンハウアー]]は、そして訳者は、間違いなく自分自身にも跳ね返ってくるこれらの言葉たちをどう思いながら綴ったのか、メタ的なお話を聞いてみたいものだ。
## 情報
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