# 2025-11-03 [[🎞️『ホウセンカ』]]を観る
![[ネタバレ#^warning]]
## 感想
劇場で鑑賞。

>[!info]
> ![[🎞️『ホウセンカ』#概要]]
### アニメーションであること
アニメーションは現実を超える表現が求められがちだ。
誇張された人物造形や現実では到底不可能な身体運動によるアクションが魅力のアニメーション映画が今も興行ランキングに名を連ねている。
それに対して本作は、頭身などにデフォルメを効かせているものの全体的に地味なデザインのキャラクター造形に、画的な見せ場もオープニングの花火くらいのもの。メインストリームのアニメーション映画作品群からは背を向けているかのようだ。
画が地味ならば話も地味。
無期懲役刑を受けたヤクザの男・**阿久津実**(現在:[[👤小林薫]]、過去:[[👤戸塚純貴]])が死を目前に自らの半生を語る内容で、大ヒット作が常にターゲットとしているようなティーンエイジャーは劇中に一人として出てこない。
唯一、本作がアニメーションらしさを発揮している点といえば、花であるホウセンカ([[👤ピエール瀧]])が男の話の聞き手であるという点だ。
ホウセンカは男の周りを動き回りながらその語りに皮肉を浴びせる。その憎たらしくも愉快な動きを観ていると、「アニメーション」という言葉の原義が「生命のない動かないものに命を与えて動かすこと」であることを改めて思い出させられる。
### 映画の品格
鑑賞直後に思ったことは「品が良い映画だな」だった。
「上品」と熟語に固めてしまうとちょっと違う気がするけれど、間違いなく「下品」からは程遠い作品。やはり品が良いくらいがちょうどいい。
主人公である阿久津は度々「大逆転」と口にする。
私はこれを下品な言葉だと思う。なぜなら逆転という語彙は陰謀論と結びつきやすい印象があるからだ。まさかこれを読んでいる者のなかに、選挙不正を主張する者たちが起こした[[2021年アメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件]]の光景を見て下品と思わなかった者はいまい。
しかし本作で描かれる「大逆転」は、死を目前にした男の最後の拠り所であり、しかもその逆転勝利がもたらす利益も愛する人への利他的なものだ。
だからこの物語においてはそのセリフは下品に響かず、むしろその品位は反転する。
その品の良さは演出の基本方針に表れている。
本当に伝えたいことは直接言葉にしないのだ。それがこの本作の演出の基本方針であり、そして阿久津にとってはそれこそ「大逆転」の糸口なのだ。本当に伝えたいことは、常にベールを挟んだ向こう側にある。
だから、映画を観ているその間は本作のメッセージが真に伝わらなくとも良いと、作り手も考えているのではないかと思った。じっくりと、30年後くらいにやっと伝わればそれで良いのだと。
あの日、目にした花火をふと思い出すように。それがこの映画の目指す大逆転だ。
## 情報
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