# 2025-12-05 [[🎞️『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』]]を観る ## 感想 劇場で鑑賞。 ![Xユーザーのこーしんりょー@SpiSignalさん: 「『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』観た。物語が人に勇気を与え、物語が人から退路を断つ。信じることしか救いの道はないように見えるし、信じるからこそ自滅してしまう。殺し殺される戦場のリアルを辛うじて直視できるのは、三頭身にデフォルメされたキャラクターで描いたからかもしれない。」 / X](https://x.com/KO_SHIN_RYO/status/1996945704837960025) >[!info] > ![[🎞️『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』#概要]] ### 白兵戦 顔面が抉られ、身体が燃やされ、眼球が零れ落ちる。敵対物を破壊するためのエネルギーの塊、すなわち武器による暴力が大規模に交わる白兵戦。 ごく狭い領域で、たくさんの人が、たくさんの人を殺す。そんなこの世の異常空間が現れるのが戦争だ。 [[🎞️『プライベート・ライアン』]]や[[🎞️『ハクソー・リッジ』]]のような実写の白兵戦映画も良いがそれではリーチしない層もいるだろう。特に子供に観せるには注意が必要なジャンルである。 その点、本作は三頭身にデフォルメされたキャラクターで描いておりショックはいくらか軽減されている。それでいてリアリティのある戦場の表現も志向しているように感じた。 ### 戦争と物語 主人公である**田丸**([[👤板垣李光人]])は漫画を描くことからフィクション=嘘を創ることが上手と見込まれて「功績係」に任命される。 その仕事は亡くなった仲間の家族へ宛てた手紙を書くというもので、その最後の勇姿を(真偽にかかわらず)伝えることを期待される。彼が書く「物語」は、お国のために立派に戦ったと遺族を慰撫し、新たにお国のために戦おうと決意する次世代の兵士を生み出す。田丸がその事実に気づくところまでがプロローグだ。 タイトルシークエンス以降はずっと戦闘シーンが続く。 お国のため、国に残した家族のため、目の前で戦友のため――そういった大小さまざまな物語に支えられて、兵士たちは「人を殺す」という異常行動に出る。 中盤以降の展開は、やはりある物語に囚われた者たちが、自らの命と、物語を完遂することとの葛藤の中で悲劇を演じることになる。 私たちは世界のすべてを明晰に理解することはできない。情報工学が発達した現代でも世界の問題を把握しきれやしないのだから、なおさら少ない情報から物語を紡ぐしかなかった太平洋戦争時はもっと歪んだ物語が流布されたことだろう。 そしていつの時代もやっかいなのは、そうして紡がれた物語を人々が盲信することだ。現代の陰謀論もそう。かつての全体主義も同じくだ。 このように、一貫して「物語」の罪を描き出す戦争映画として私は本作を観た。 今年の[[シンエイ動画]]制作の劇場用アニメーション映画は本作と[[🎞️『トリツカレ男』]]。いずれも売れ線のキャラクターデザインから外れた企画ながら、思わず唸らせる力作を連発中だ。 >[!check] > 非アニメファン的にはこういうアニメーション映画のほうが観やすい。どちらもオススメだ。 > > - [[2025-11-11 🎞️『トリツカレ男』を観る]] ## 情報 ![[🎞️『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』#予告編]] ![[🎞️『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』#主要スタッフ]] ![[🎞️『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』#関連リンク]]