# 2025-12-06 [[🎞️『消滅世界』]]を観る
## 感想
劇場で鑑賞。

>[!info]
> ![[🎞️『消滅世界』#概要]]
### 人工授精をめぐる思考実験
最初に字幕で設定が説明され、現代の風景の中、人物のささいな振る舞いや会話内容で現実の世界や「リアリティ重視の映画」とは異なる空気感を出すことで、SFらしい[[センス・オブ・ワンダー]]を生じさせる映画がある。本作もそのパターンだ。
人工授精技術が高度に発展し、子どもを生むこと、つまり生殖に性行為が不要になった世界。すると日本社会はどうなるかということを描く。
性行為を行う理由が性欲解消の意味しかないとなると夫婦間での性交渉は不純なものとしてタブー視されるようになる。夫婦とは家族であり、したがって夫婦間の性的な交わりは爛れた「近親相姦」であると社会的に認識されるようになる。
しかし人間という種がすぐに性欲を捨てることはできない。長い進化の過程で生殖の必要性から性欲を獲得した以上、生殖にそれが不要になったとしても急に性欲がなくなるわけではない。だから性欲を解消するための関係性を外部に持つ必要が生じる。
だから夫婦関係とは別に男女問わず別の恋愛関係を持つことが普通となる。実際にそうなるかは分からないが、論理的な帰結ではあるとは感じる。
中盤まではそんな社会の「正常」に沿って生きようとする主人公**あまね**([[👤蒔田彩珠]])が描かれる。
禁欲的な社会故か徹底して抑圧的な演技が貫かれていてややそのテンションに合わせるのに時間を要したが、SF的な思考実験として楽しく観られた。
### そして更にラディカルな思考実験へ
かと思いきや、終盤はこのSF設定からより過激な倫理へと向かっていく。私もそれなりに現代日本の家族観に疑問を持っているが、本作が提案するオルタナティブな家族観には相当な嫌悪感を抱いた。
ラディカルな思想に触れると自らの内にある保守性が相対的に浮かび上がる。後半の実験都市パートは映画としての刺激がぐっと強くなり、最後まで尻上がり的に面白くなっていった。
## 情報
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