# 2025-12-15 [[🎞️『ロマンティック・キラー』]]を観る ## 感想 劇場で鑑賞。 ![Xユーザーのこーしんりょー@SpiSignalさん: 「『ロマンティック・キラー』観た。魔法の力で四方八方からキラキラ映画的胸キュンシチュエーションが襲いかかるメタコメディ。大量のパロディを投入して異なる世界のイケメンたちと百人組手をしながら恋に落ちないよう奮闘する。上白石萌歌を100分堪能できるので最高です。オチも好き。」 / X](https://x.com/KO_SHIN_RYO/status/2000562913963331985) >[!info] > ![[🎞️『ロマンティック・キラー』#概要]] ### ティーンの惚れた腫れたとかどうでもいい! 全盛期ほどではないが、それでも年に何本かメジャーで制作される、いわゆるキラキラ映画。 壁ドンや袖つかみ、異様に顔を近づけての会話など、恋愛フィクションにおいて手垢がつきまくった[[クリシェ]]はよほど気合を入れて演出しないともはやギャグになってしまう。 だったらはじめからギャグとしてやってやろう。本作はそんな企画だ。 ゲームとチョコと猫があればそれでいい、恋愛にはまるで興味がない主人公の**杏子**([[👤上白石萌歌]])。彼女があまりにも恋愛をしないものだから恋愛エネルギーを糧とする魔法界はエネルギー不足で大困り。 そんなわけでやってきた魔法使いの**リリ**([[👤高橋ひかる]]、声:[[👤伊藤俊介]])は杏子に魔法をかける。次元を歪め、様々なイケメンが杏子の前に現れて、四方八方からラブコメ的シチュエーションをぶつけることで彼女が恋をするように追い詰めるのだ。 杏子にとってははた迷惑な話だが、次から次へとゾンビのように現れるイケメンたちが「イケメン仕草」で詰め寄る序盤のシークエンスはアクション演出もキマっていてかなり楽しい。 キラキラ映画クリシェギャグだけでなくパロディも盛りだくさんで、公式的に伏せられているものを省いても[[🎞️『スピード』]]、[[📺️『愛の不時着』]]、[[🎮️『刀剣乱舞』]]、[[🎞️『君の名は。』]]、[[🎞️『すずめの戸締まり』]]、[[📺️『世界の中心で、愛をさけぶ』]]などどっかで観た/聴いたシチュエーションやセリフ、キャラクターの釣瓶打ちである。 これが笑えるのは、ずばりバカバカしいからだ。 誰かが誰かに恋をする。それは確かに素晴らしいことなのかもしれないが、その様子を「胸キュン」といってお手軽に消費する姿は、男女問わずなんとも滑稽だ。 劇中ではリリが杏子の部屋のテレビ画面から杏子が様々なイケメンからアプローチを受ける様子を眺めながらイケメンたちを応援する様子が描かれる。 そんなリリの様子はまさしくラブコメを楽しむ我々の姿だ。恋は素晴らしいというお題目を掲げ、異性愛主義に殉じるキャラクターを見てワイキャイする。シチュエーションギャグもメタ的ならば、それを消費する我々を劇中に登場させることもメタ的だ。 しかし、恋愛に興味がないという杏子にとってはそんな我々はお節介なことこの上ない。コメディとしては「絶対に恋愛しない」VS「絶対に恋愛させる」という矛盾構造のギャップこそ、本作のバカバカしさの核であるといえるだろう。 もちろん本作はお気楽なコメディなのでここから[[アロマンティック]]のアイデンティティに言及するような意識の高さを見せてくれやしないのだが、異性愛主義の[[パターナニズム]]に陥りそうな危うい基本設定ながら穏当なところに着地してくれる。 ずばり、「ティーンの惚れた腫れたとかどうでもいい!」と私が度々冗談めかしていうラブコメの浅瀬よりももう少し深く潜って、「じゃあ惚れた腫れたがもたらす効能って何だ?」ということをそこそこ描いてくれる。 すると映画のジャンルはキラキラ(恋愛)映画から、キラキラ(青春)映画へとジャンルシフトするのだ。しかし、青春映画感が極に達したところでリリが「違ーう!」とツッコミを入れて恋愛展開のレールに戻そうとする。 それでもちゃんと「惚れた」先にある幸福感を描いていたからこそ、クライマックスで杏子が取るラブコメ異性愛主義的倫理観への反抗を気持ちよく受け取れる。 それはラブコメ異性愛主義的世界観からすればご都合主義の誹りを受けかねないものだ。しかし「フィクションはこれくらいメチャクチャやってもいい」という本作特有のリアリティがそこを寛容にさせてくれる。[[バケモンにはバケモンをぶつけんだよ|ご都合主義にはご都合主義をぶつけんだよ]]というやつだ。 ### 今年は[[👤上白石萌歌]]の年 今年も最終盤ということで、一年の邦画を振り返ってみると2025年もっともスクリーンで輝いていた俳優のひとりとして本作の主演である[[👤上白石萌歌]]は外すことができないだろう。 思えば昨年の年末頃から[[🎞️『366日』]]の予告編がノイローゼになるくらい[[松竹マルチプレックスシアターズ|SMT]]系列の劇場で流れており、単純接触効果のせいか[[👤上白石萌歌]]の顔を見ると動悸が早くなるようになったのだった。 そして今年は[[🎞️『366日』]]、[[🎞️『トリツカレ男』]]、そして本作と、大ヒット作のヒロインから極めて高い評価を受けたアニメーション作品の声優、そして激しいアクションも求められるコメディ作の主演と八面六臂の活躍を見せた。 来年も引き続き彼女の出演作は追いたい。 >[!check] > なんだかんだで三作とも忘れがたい作品である。 > > - [[2025-01-21 🎞️『366日』を観る]] > - [[2025-11-11 🎞️『トリツカレ男』を観る]] ## 情報 ![[🎞️『ロマンティック・キラー』#予告編]] ![[🎞️『ロマンティック・キラー』#主要スタッフ]] ![[🎞️『ロマンティック・キラー』#関連リンク]]