# 2026-01-17 [[🎞️『万事快調 オール・グリーンズ』]]を観る
## 感想
劇場で鑑賞。

>[!info]
> ![[🎞️『万事快調 オール・グリーンズ』#概要]]
### 交差点
青春とは何か。私はそれを一言で言い表すことができない。仮に辞書的に「若い時代」と言ってみたところでそこには何か重要なものがこぼれ落ちているような気がするのだ。
近年の日本映画が描く青春は、その「何か重要なもの」を描くための演出設計や人物設定に偏りがあるように感じる。どこか過剰にキラキラしていたり(昨年で言うと例えば[[🎞️『か「」く「」し「」ご「」と「』]])、極度に貧困だったり([[🎞️『愚か者の身分』]])して、なんだか遠い国の出来事のような気もしてくる。
>[!check]
> いずれも現代日本の青春映画の秀作ではあるが、「私が身近に思える青春映画」とは感じなかった。
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> - [[2025-07-03 🎞️『か「」く「」し「」ご「」と「』を観る]]
> - [[2025-11-13 🎞️『愚か者の身分』を観る]]
[[🎞️『万事快調 オール・グリーンズ』]]は私の世界観に近いものを描こうとしている青春映画だった。主要人物の性別や所属高校の性質、そしてもちろん彼女らの犯罪行為とは遠いところで生きてきた私だが、本作が描く地方感やサブカル感は身に覚えのある描写である。
三人の主要人物はそれぞれ一人はラップ・SF小説、一人は映画、一人は漫画を好む。微妙に趣味が重ならないながらも好きを語らうコミュニケーションは寧ろ高校時代のほうがありそうな話である。大学以降はより同質的なコミュニティに所属しがちだからだ。その点、本作の「たまたま集った仲間たち」感もまた私の思う青春観と合致する。
彼女たちの集いを象徴するシーンといえばやはり劇中で二回出てくるあの交差点だろう。
一回目は、彼女たちがこのままこの村にい続けたらどうなってしまうのか、そんな最悪の未来予想を目撃してしまう場面。
二回目は、そんな最悪な未来予想から逃げ切るための具体的な方策――大麻栽培――に乗るか、乗らないかという場面。
いずれも交差点というロケーションを存分に活かした場面だ。たまたま居合わせる場所としての交差点。事後が起きる場所としての交差点。そして、警官が通りかかる場所としての交差点。
人物の立ち位置と信号機の色を合わせる心理演出も気が利いていて、そこから長い第一幕を終えて劇伴が鳴りはじめてタイトルクレジットへとなだれ込む流れが気持ちいい。
あの交差点であの瞬間、ただのクラスメイトだった三人の人生が確実に交差した。そう思わせる素晴らしいシークエンスだ。
>[!cite]
> ![[allgreens.webp]]
> 信号機を通して登場人物の旗色を示す見事なショット。
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> 引用:[本予告『万事快調〈オール・グリーンズ〉』1.16 FRI 未来を力づくで切り開け!不適切な青春が始まる! - YouTube](https://www.youtube.com/watch?v=N9DQYSy2uLI)
### 物語=予定調和を拒否
タイトルクレジット以降、彼女たちは自らを「**オール・グリーンズ**」と名乗り、学校の屋上で大麻栽培をしながら金を稼ぐ青春犯罪映画の流れが進む。犯罪映画の王道として、はじめは上手くいくのだが、だんだんと裏社会の暴力性に絡め取られていくことになる。
映画において「一から十まで上手くいく」というストーリーテリングは極めて稀だ。主人公たちの前に何らかの障害が立ちふさがり、それをどう克服するかという葛藤がドラマの基本だからだ。
さらに、犯罪映画においては「因果応報」という観念が登場人物を追いかける。罪を犯した者には罰を――そんな多くの人が無意識に内面化しがちな[[公正世界仮説]]的世界観が、フィクションの犯罪者にも何かしらのしっぺ返しを望んでしまう。罪人が罰を受ける姿を見て我々観客は安心感を得たいのだ。
そんな<ruby>物語<rt>フィクション</rt></ruby>の予定調和に登場人物たちはどこか自覚的だ。特に**美流紅**([[👤出口夏希]])は「映画好き」ということもあって、メタフィクション的な空気をまとっている。自らの身の上を語るパートはまるで[[👤マーティン・スコセッシ]]の犯罪映画風に観客に対して直接語りかけてくる。
極めつけはオール・グリーンズが軌道に乗ってきて仲間が集まった場面での[[🎞️『ファイト・クラブ』]]パロディーだ。
> The first rule of ALL GREENS is you don't talk about ALL GREENS.
> The second rule of ALL GREENS is you don't talk about ALL GREENS.
映画ファンの多くが人生で一度は真似してみたい口上であるが、これを語る美流紅は最後の最後まで[[タイラー・ダーデン]]のようなトリックスターぶりを見せる。
特に、観た人ならば分かる、本作の最後に出てくる「アレ」はまるで、[[🎞️『ファイト・クラブ』]]における「サブリミナル的に一瞬だけ映る男性器」と同じ役割を果たしている。
普通の映画は最後に「これは映画だ」「ここで描かれた犯罪行為はあなたの人生と関係のない絵空事である」「だから安心して家へお帰りください」――そんなメッセージを語って自らの責任をウヤムヤにする。
だけど美流紅は最後に観客に対して挑発してみせる。フィクションである私たちの行く末を観客の欲望ごときに定められてなるものか、たとえこの映画が終わったその後も抗い続けてやるのだと。なんとも格好いい映画である。
## 情報
![[🎞️『万事快調 オール・グリーンズ』#予告編]]
![[🎞️『万事快調 オール・グリーンズ』#主要スタッフ]]
![[🎞️『万事快調 オール・グリーンズ』#関連リンク]]