# 2026-01-17 [[🎮️『やりなおしクランクイン』]]をプレイ
![[レーティング#^r-18]]
## ファーストインプレッション
本作のプレイを開始したのは昨年10月31日。珍しく発売日にプレイを開始して早2ヶ月半が経過した。もちろんクリアできていない。それどころか、発売日に二時間ほどプレイしてそのまま放置、私の日常は加速度的に多忙となり、エロゲーを起動するモチベーションは失われてしまったのだった。
年末年始の休みを通してちょっとだけリフレッシュ。相変わらず忙しくはあるのだが、エロゲーをプレイする時間くらいは捻出できる余裕が生じたので久々に[[🎮️『やりなおしクランクイン』]]のヒロインとの「やりなおし」を行った。6時間ほどプレイし、最初のエッチシーンに到達。ちょっとビックリしたことがあるのでここで第一印象をまとめたい。
そもそも本作を発売日にプレイ開始したのはある野望があったからだ。10月に本作、そして11月に発売する[[🎮️『True Colors -memories of the abyss-』]]と、二ヶ月続けて映画制作を題材とした青春もののエロゲーをプレイして比較するのが面白かろうと画策していたのである。
先述した通りこの目論見は初日で雲散霧消することになるのだが、ここでは[[🎮️『True Colors -memories of the abyss-』]]が12月に延期したせいだ、ということにしたい。それすらももう発売したのだけれども。
やはりそれなりに映画ファンを自称しているつもりでいるので、映画制作が題材と聞くと気にしないわけにはいかなくなるものだ。
学園の映画部、それも廃部寸前の映画部で学生映画を撮る。創作者たちの物語であり、創作をめぐる物語には必然的に創作論が滲み出る。
なぜ創作をするのか、なぜ創作されたものを楽しむのか。==私がよく使う表現でいうところの「嘘っぱち」は、なぜこんなにも人を引き寄せるのだろうかという問いが描かれる==。
映画は物語を語るだけにあらず、そこにはカメラの前で演じる人がいる。当然ながらその演技もまた「嘘っぱち」だ。その人でない、他の人のフリをするのだから。
本作の唯一の攻略対象ヒロインである **神鳥 流花**(CV:[[👤神山翠]])は主人公が書いた脚本を元に監督兼、ヒロインを演じる。私にとってはこの[[🎮️『やりなおしクランクイン』]]というエロゲー自体が「嘘っぱち」なのだが、そこに存在する(……もちろん現実には存在しない)「嘘っぱち」である彼女は、劇中劇というさらなる「嘘っぱち」の存在を演じることになる。彼女は自らに当て書きされたヒロインを完璧に演じるのだが、ある想いを抱いたことでその嘘を体現できなくなってしまう瞬間が訪れる。そんな葛藤を乗り越えるところが、現在私がプレイした範囲におけるクライマックスと呼べるパートだろう。
嘘、嘘、嘘とうるさいが、我々「嘘っぱち」の愛好者はこうした嘘まみれの中で時に光り輝く本物、==否応なく信じられる瞬間==が生じるのではないかと妄想し、だから「嘘っぱち」と理解しながらそれを食らう。その瞬間とは、素朴に考えれば「本物そのもの」であるはずの現実ではなぜか生じ得ない瞬間なのだ。たぶん、そうした不可思議な瞬間を本作は「理想」と呼んでいる。
ところでここまでまったく説明していなかったが、本作の主人公の**猫屋敷** <ruby>**叶良**<rt>とら</rt></ruby>は三十路の天才小説家で、過労で倒れて生死をさまよっていたところを天才薬学者の妹の薬によって若返ってしまうという導入がある。
学生時代にさっぱり青春らしいイベントに遭遇することなく創作を、つまり理想を求める行為をしていた彼は、もういちど学生として理想の青春を「やりなおす」ことになる。
クソな現実を相対化して初めて理想が姿を見せる。そして今度はその理想で、現実を塗り替える。現実の青春をやりなおし、理想の青春へクランクインする。
主人公とヒロインが結ばれたところまでプレイしたが、どこまでその理想に酔わせてくれるだろうか、楽しみだ。
## バイノーラル録音によるエッチシーン
それはともかく、このゲームの最初のエッチシーンで僕は勃起できなかった。勃起するどころじゃなかったのだ。
最初のエッチシーンに到達して初めて、このゲームではエッチシーンが[[バイノーラル録音]]であることを知った。まるで耳元で囁かれているように感じるように声優の音声が録音されているのである。
制作ブランドの[[CloverGAME]]は同社内に音声作品ブランドの[[Clover Voice]]を抱えており、おそらくCloverという名称でバイノーラル録音に力を入れているというブランドカラーを打ち出しているのではないかと思う。
そんなわけで個人的に初めてバイノーラル録音という飛び道具を活用したエロゲーのエッチシーンに臨んだわけだが、勃起に至ることはなくシーンを終えてしまった。まるで初めての風俗で勃起できなかった童貞のように。理由は二つだ。
### 初見の戸惑い
第一に、初見の戸惑いと、技法の側に興味が引き寄せられたからだ。
そもそも私はヒロインの喘ぎ声によって部屋の空気を振動させることに快感を覚える、スピーカーでエロゲーをプレイする勢力の一員だ。だからエッチシーンに入った瞬間に明らかに片方のスピーカーからしか音が出ていないことに気づいて最初は不具合かと感じた。
この最初の戸惑いから、ああこれはバイノーラル録音かと気づいて普段エロゲーでは使わないゲーミングイヤホンを挿してみて納得。これは確かに意図的なこのゲームの演出なのだ。
そうなると、エッチシーンそっちのけで「なぜバイノーラル録音なのか」「その演出効果はどのようなものなのか」を考える方に思考が飛んでしまった。残念ながら、目の前のおっぱいよりもゲームデザインのほうが私の興味を引いてしまったのだ。
### リアリティのズレ
第二に、従来のエロゲー体験との差から生じる、私の中の「エロゲーのリアリティ」とのズレに対する違和感。
バイノーラル録音による音声は、ヒロインとの位置関係という情報が音声によって、すなわちテキストや一枚絵とは異なる回路によって付与される。なるほどヒロインの流花は、主人公=私の右耳で囁いているのだなと音声で分かる。しかし、それはテキストや一枚絵と同期していない。
従来のエロゲーの音声は発話者の位置情報をそもそも意識させることがなかった。しかしそれはバイノーラル録音という技術によって具体的に表現されずとも、私の頭の中では必要に応じて補正されていたものだ。動かない一枚絵と、位置情報を持たない音声でも、私の頭の中では動いているし、位置情報を持っている。
それができるのは、従来のエロゲーという表現媒体がプレイヤーに与える情報量に私が適応しているからである。一枚絵+テキスト+音声という要素の組み合わせで描写を伝えるエロゲーは具体的な現実とは程遠く、抽象化されている。抽象化されているからこそ、頭の中で好き勝手に補正することができる。
ところがバイノーラル録音による音声によって位置関係という情報がひとつ具体化されることで、私が普段行っている補正とズレる。ズレるととたんに違和感が生じてエッチに集中できなくなる。
つまり、プレイ中はシコるよりも次のようなツッコミで忙しくなってしまったのだ:
1. その体位から耳元で囁くのキツくね?
2. 右耳で囁いて、次に左耳で囁いてと、その動きを想像すると疲れそう。
3. テキスト表示の音声はバイノーラルなのに、BGV[^1]はそうでない。録音方法が異なる音声が交互するのが気持ち悪い。
1と2については、たぶんリアリティよりも「バイノーラル録音ならではのインパクト」を重視しているのだろうと思われる。演出によって現実味が失われるというトレードオフは創作において度々生じるジレンマであり、本作においてはリアリティよりも演出効果を重視した、といえるだろう。だからここは好みの範囲だ。
しかし、3についてはなぜこういう仕様なのか、作り手の考えを推測することができなかった。もちろん作り手は色々と実験をした上でこの形が現状できるベストないしはベターだと考えたのだろう。バイノーラル録音によるBGVの作成は素人では思いつかないような困難があるのかもしれない。ただ、個人的には質が違う音声素材が交互するのは気になってしまうため、次のシーンからはBGVをオフにしようと思った。
とにもかくにも以上のような理由により「バイノーラル録音」が原因でエッチシーンに集中できなかったのは確かだ。
しかしそれも初見ゆえのものなのかもしれない。バイノーラル素人童貞になった私なら、二度目のエッチシーンでついに勃起に至れるかもしれず、いずれはバイノーラルヤリチンになっている可能性もなくはない。むしろそうなってくれ頼むと今は願わずにはいられない。
## 情報
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[^1]: バックグラウンドボイス