# 2026-04-10 [[🎞️『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』]]を観る
![[ネタバレ#^warning]]
## 感想
劇場で鑑賞。

>[!info]
> ![[🎞️『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』#概要]]
### スポ根ドラマと珍道中
3月からずっと花粉症が酷く、またそれに伴う体調不良と無気力感で外出控えに陥っていたのだが、アカデミー賞絡みで観たかった本作を終映ギリギリでなんとか駆けつけることができた。
実在の卓球選手を描いたドラマであるが、卓球シーンは最初と最後しかない。第一幕ではロンドンの世界選手権大会に出場した**マウザー**([[👤ティモシー・シャラメ]])が日本人選手**エンドウ**([[👤川口功人]])に決勝で敗れ、第三幕では東京でリベンジマッチだ。
では2時間半という長尺の中、その間の第二幕では一体何が描かれるか? ずばり、マウザーが世界選手権大会が開かれる東京への渡航費稼ぎだ。
主人公のマウザーは卓球の才能は間違いなく当時の世界最高峰。
しかし、1950年代当時のアメリカにおいて卓球はプロスポーツとしてはマイナーもマイナーでまともに稼ぐこともできていなかった。才能と時代が合っていない、生まれるのが早すぎた男だ。
それでも世界選手権大会で優勝すれば一気に国内の知名度も上がるだろうと目論んでいたが、無名の日本人選手に敗れてしまいその計画も泡と消える。バスケットボールなどメジャーなスポーツ大会の余興として屈辱的な卓球パフォーマンスを披露しながら巡業し、次の東京大会への資金を稼いでいたのだが……。
このマウザーという男、==とにかく人間のクズ==である。
自信過剰でナルシスト、嘘ばかりつき、周囲にトラブルを起こしまくる。
劇中でも犯罪行為連発。伯父の金を半ば脅して奪い取る、不倫相手の幼馴染を孕ませておきながら音信不通になる、イカサマ賭け卓球で金を巻き上げる――さりとて詰めが甘いから様々な人たちから追いかけ回される羽目になる。
そんなドタバタ劇が第二幕で描かれるもので、実質その珍道中こそがこのドラマのメインパートと言える。
時代は違うがニューヨークを舞台としたドタバタ劇として、近作の[[🎞️『ANORA アノーラ』]]や[[🎞️『コート・スティーリング』]]を思い起こさせる。
ニューヨーク映画はとにかくワチャワチャしてなんぼ、という感覚が私にも身についてきた。
### たとえ人間のクズであっても
たとえ倫理的には人間のクズであっても卓球に関しては本気のマウザーだ。
打倒エンドウのために卓球に打ち込む特訓シーンがある。かと思いきや孕ませた幼馴染が旦那に不倫の事実を打ち明けるシーンがカットバックされ、まったく応援したくなくなる特訓シーンに様変わり。もちろんギャグでやっている編集だが、これを笑えないとひたすらイライラする映画として映るだろうなと思ったりした。
しかしそんなドタバタの後に待ち受ける東京でのリベンジマッチはやはり熱い。
ライバルであるエンドウ役の[[👤川口功人]]は2025年の東京[[デフリンピック]]で銅メダルを獲得した現役選手でパフォーマンスとしても「ガチ」。更に50年代の日本の屋外イベントを再現した美術や、エキストラ含めた役者の「当時感」も日本人から見ても驚きの再現度だ。
一躍スターとなった自国選手を応援する民衆と、その裏返しとしてアメリカ人選手を悪役として舞台に上げる(アメリカ側スポンサーの意向もあるのだが)あの嫌~な感じとか日本人観客としては最悪で笑える。実際、マウザーはこれまで散々見せつけられてきたように善人とは遠く離れた人間のクズなので、その嫌さがあっても辛うじて直視できるというバランス感覚も見事。
そしてスポーツというものは「ゲーム」という体裁を取ることで、その登場人物の倫理を隠蔽して熱中できる物語となることもこのクライマックスは示している。
本作の場合は更に、戦後直後の日本でアメリカ企業が主催するイベントという体裁を採っていることも合わせて、資本主義のグロテスクさがスポーツの感動によって薄められている感じがする。いわゆる[[スポーツウォッシング]]というやつだ。
マウザー自身は目の前のライバルであるエンドウに勝ちたい一心だろうが、意図せずしてそうした構造とも孤軍奮闘している所が個人的には熱かった。
ラストシーンはそんな人間のクズもやはり人間であることを示して終わる。
号泣するマウザーに対し、そんな彼を見つめるある人物の真顔が醸し出すおかしみと、そのままある音声が流れたままエンドロールに突入するところにやはり笑ってしまったのであった。
## 情報
![[🎞️『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』#予告編]]
![[🎞️『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』#主要スタッフ]]
![[🎞️『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』#関連リンク]]