# 2026-06-05 [[🎞️『シラート』]]を観る
![[ネタバレ#^warning]]
## 感想
[[Dolby Atmos]]のシアターで鑑賞。

>[!info]
> ![[🎞️『シラート』#概要]]
### 映画は物語を語る道具なんかじゃない
映画に何を求めるか。物語だろうか。いや、そうじゃないだろう。
……みたいなことを先週[[🎞️『サンキュー、チャック』]]の感想でも語った気がするが。
>[!check]
> [[🎞️『サンキュー、チャック』]]は、素晴らしい瞬間は伏線などなくとも素晴らしいと感じることができると証明してみせた。対して[[🎞️『シラート』]]は、人生に伏線などなく悲劇は唐突に訪れるのだと冷酷に告げる。
>
> - [[2026-05-27 🎞️『サンキュー、チャック』を観る]]
爆音を鳴らす巨大なスピーカーが大地を揺るがすビートを刻み、意味もなく身体を動かす人の海は自然とアドレナリンを分泌させる。
スクリーンに映される広大な砂漠はどこまでいっても岩と砂ばかりで、とても生命が芽吹く気配がしない。無言のまま、死の気配を印象付けるのみ。
さて、そんな砂漠のレイブパーティーの会場へと向かう道中を描くこの映画に、我々は物語の欠片を目ざとく見つける。
舞台設定はいつごろなのだろう? スマホはあるから現代か、はたまた少し未来? どうやら世界的に大きな出来事があったらしく、軍隊の行進を目にする場面もある。そうした設定や描写から、大きな物語が背景にあるのだろうと我々は読み込む。
メインプロットは主役と思われる父子の娘探しだろう。きっとクライマックスで娘の安否についての事実が見つかり、その結果がどうあれ何らかの形でこの旅の総括がなされるに違いない。
そんな「物語」に本作は中指を立てる。これは映画だ。物語を語るための道具なんかじゃないのだと。
観客を席に縛り付ける約2時間の中で、最も情動を突き動かすように音と映像を編集する。その目的を果たすのに物語は必要条件ではないのだ。
だからこの映画は非物語的な事象が起こる。伏線などという古臭い物語的技巧をまるで無視した展開が続く。
### 口外禁止の先にあったもの
配給会社は本作の宣伝で「予測不能」を強調した。きっと宣伝担当もお手上げだったに違いない。
>[!cite]
> この先、口外禁止――
> 極上の音響と映像美に彩られた、衝撃映画体験!
>
> [映画「SIRAT シラート」公式サイト](https://transformer.co.jp/m/sirat/)のイントロダクションより
口外禁止とのことなので、慎重にひとつだけ重要なことを言えば、==本作は恐ろしい映画だ==。終盤にあるジャンルの映画へと姿を変え、そこから人生で最高レベルの緊張を味わった。近年の作品で匹敵するのは[[🎞️『シビル・ウォー アメリカ最後の日』]]で語り草となっている赤サングラスのシーンだろうか。
私は、あのショットを両目を開けて観続ける勇気がなかった。片目だけ開けて恐る恐るスクリーンを盗み見るように鑑賞するしかなった。
この映画を嫌うだろう人の顔は即座に浮かぶ、そんなタイプの映画ではあるが個人的にはずばり傑作と白旗を挙げよう。
予告編での[[👤樋口毅宏]]氏による「==死ぬかと思った==」というコメントに甚く同意である。
## 情報
![[🎞️『シラート』#予告編]]
![[🎞️『シラート』#主要スタッフ]]
![[🎞️『シラート』#関連リンク]]