# 2026-08-01 [[🎞️『デッドマンズ・ワイヤー』]]を観る ## 感想 劇場で鑑賞。 ![Xユーザーのこーしんりょー@SpiSignalさん: 「『デッドマンズ・ワイヤー』観た。三日間にわたる事件の経緯はどこかだらりとしていて、物語的に明快な正しさは描かれない。だからこそこれが1977年に起きた実際の事件であると信じることができる。事件に絡む誰もが不正義に見えるし、そもそも正義など現実には存在し得ないのではないかと思わせる。」 / X](https://x.com/KO_SHIN_RYO/status/2083490410626998286) >[!info] > ![[🎞️『デッドマンズ・ワイヤー』#概要]] ### 現実は物語ほど刺激的でなく、明快でもない 首とショットガンをワイヤーで固定し、下手に動けばワイヤーが緩んで自動発射される装置**デッドマンズ・ワイヤー**。恐ろしい発想であるが、実際にこの装置が使われた人質立てこもり事件を映画化したのが本作だ。 主人公の[[👤トニー・キリシス]]([[👤ビル・スカルスガルド]])は住宅ローン会社に騙されたと主張し、その会社の社長の息子**ディック**([[👤デイカー・モンゴメリー]])を人質に取る。人質に取ったまま会社から自宅へと彼らが移動の間、警官たちもまるで手が出せない。 自宅へ帰るとトニーはディックを監禁したまま立てこもり、注目を集める中で地元ラジオ局と電話で連絡を取り自らの主張を世間へと広げていく。 この事件は三日間にわたるが、互いに状況を動かすことができずどこか弛緩した時間が続くのがいかにも「現実に起きた事件」という感覚を強める。1977年という時代にあって、ひとりの市民が自らの声を拡散する方法はラジオだ。 ラジオがトニーの声を広げ、テレビが事件の現場を映し、新聞が翌朝になってその状況を詳しく報道する。インターネットや[[ソーシャル・ネットワーキング・サービス|SNS]]が存在する現代とはスピード感が違う。 本作をサスペンス映画として見ると事件そのものはやや刺激が小さいかもしれないが、時代感を味わえる映像や役者の演技で観客の関心を維持するところは映画の技量を感じさせる。 もう一点、本作の特徴として挙げたいのが==明快な正義の不在==だ。 ローン会社は生活に困窮した者を容赦なく追い詰める資本の論理を体現する。 トニーは社会の犠牲者として同情できる一方で暴力で他人を脅す方法で自らの状況の回復を図ろうとする。 メディアは事件を伝える公共性を持ちながら視聴率を求めて事件を編集し利用しようとする。 群衆は歴史的事件の目撃者になろうと野次馬のような振る舞いを見せる。 ここには観客にとって倫理的な拠り所となれる人物は登場しない。それぞれのプレイヤーが複雑な利害環境の中で事件に関わり、誰か・何かが正しいという落としどころを作らない。 そこが作り物めいた「物語」ではないただの「現実」であるとますます実感させる。だからこそ「見てられんな」とは言っていられないのだ。 ## 情報 ![[🎞️『デッドマンズ・ワイヤー』#予告編]] ![[🎞️『デッドマンズ・ワイヤー』#主要スタッフ]] ![[🎞️『デッドマンズ・ワイヤー』#関連リンク]]