# 2026-10-20 [[🎞️『ファーストボイス』]]を観る
## 感想
劇場で鑑賞。

>[!info]
> ![[🎞️『ファーストボイス』#概要]]
### セクハラという概念が存在しない窮屈な世界
今年9月16日に発表された[[ジェンダー・ギャップ指数]]で日本は145カ国中117位だった。初の女性首相が誕生した年でも、順位は前年の118位から1つ上がったにとどまる(2025年は148ヶ国中118位)。
一方で1位はアイスランドである。アイスランドといえば、昨年公開された[[🎞️『女性の休日』]]は1975年にアイスランド国内の約90%の女性が仕事や家事を休んだ日を取り上げたドキュメンタリー映画であった。自分たちの労働を軽視する社会に異議を唱え、一斉に行動を起こしたのが50年前のことだ。
[[🎞️『ファーストボイス』]]は1989年に提訴された「福岡セクシュアル・ハラスメント裁判」に着想を得た劇映画だ。
[[🎞️『女性の休日』]]が問題視した「男性主体の社会」へのカウンターと「セクハラ」とでは問題意識にズレはある。しかし、セクハラをめぐる裁判がはじめて社会的な注目を集めたのが37年前だと改めて確認するとやはり驚きを覚える。私の父親が働き始めた頃の社会ではセクハラという言葉も、被害を訴えて是正を求めるための仕組みも、現代のように浸透していなかったのだと考えると妙にハラハラしてしまう。
89年当時の日本ではまだまだ「家庭は女性の役割」という意識は根強く、「女性はお茶くみ」という慣習や、性的嫌がらせがキャリアを阻む壁になっていたことが本作から伝わってくる。そうした問題は現在も各所で争われており、経済的機会における男女格差は日本の[[ジェンダー・ギャップ指数|GGI]]の低さに表れている課題のひとつである。
古い慣習を変えていくためには[[ファーストペンギン]]の存在が重要だ。
「日本で初めてのセクシュアル・ハラスメント訴訟」という題材はまさしくその[[ファーストペンギン]]を描くものといえる。前例のない裁判を通して、昭和と平成の境目の時期の「男女の働き方」とその是正を描くという本作の企画は目の付け所が素晴らしい。
### 衣装で決める
私はファッションにまるで興味のない映画ファンなため、映画における衣装デザインの仕事になかなか注目がいかない。しかし本作からは珍しく「衣装で勝負する」という気概を感じることができた。
そこには90年前後の日本を再現するという仕事もあるが、やはり本作のクライマックスでの[[👤綾瀬はるか]]と[[👤ファーストサマーウイカ]]の衣装が映画のテンションを一気に引き上げる。「何を着るか」が劇中の裁判の行方を決定的に変えたのだと、観客として信じることができる素晴らしい衣装演出だった。
どこまでもシリアスに描けそうな題材だが、中心に[[👤綾瀬はるか]]を据えることで程よい軽やかさを保ち、女性の地位向上につながるこの37年間の歩みを描ききった秀作である。
[[ジェンダー・ギャップ指数|GGI]]を取り上げるまでもなく、まだまだ改善の余地があるこの社会で、男性としても前時代的な慣習に否定の声を上げる勇気をもらえる一作だった。
## 情報
![[🎞️『ファーストボイス』#予告編]]
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