# 2026-10-22 [[🎞️『DIGGER/ディガー』]]を観る ## 感想 [[IMAX#IMAXレーザー/GTテクノロジー|IMAXレーザー/GTテクノロジー]]シアターで鑑賞。 ![Xユーザーのこーしんりょー@SpiSignalさん: 「『DIGGER/ディガー』観た。現代は風刺が難しい時代である。どれだけ愚かに描いてみせても、現実がすぐにその愚かしさを超えてくるからだ。だから奇策が必要だ。本作が採った奇策には面食らったが、トム・クルーズという存在自体が飛び道具な大スターが映画に付与する迫力に圧倒された。」 / X](https://x.com/KO_SHIN_RYO/status/2113082888308891748) >[!info] > ![[🎞️『DIGGER/ディガー』#概要]] ### 一筋縄ではいかない監督 鑑賞前は、正直に言って謎な映画だった。ティザー映像では[[👤トム・クルーズ]]が老けメイクをしてパワフルな石油王を演じることしか分からない。予告編でも、どうやら地球規模の災害が起こるらしい、ということくらいしか分からない。 そして監督は[[👤アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ]]。[[🎞️『バルド、偽りの記録と一握りの真実』]]以来、4年ぶりの新作である。一筋縄ではいかない映画ばかり撮る監督であるが、本作もやはり一筋縄ではいかない奇手を仕掛ける。 例えば[[🎞️『バルド、偽りの記録と一握りの真実』]]はメキシコ出身のアメリカで成功した映画監督という、イニャリトゥ自身の境遇を反映した主人公を描く半自伝的な物語かと思いきや、夢と現実が入り乱れ、物語の整合性すら揺らいでいく奇妙な作品だった。 また[[アカデミー賞]]で作品賞を受賞した彼の代表作である[[🎞️『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』]]では、[[📘『愛について語るときに我々の語ること』]]を原作とする舞台劇の成功のために奔走する主人公を擬似的なワンカットで撮影する。 舞台劇というフィクションと舞台裏の現実的なイザコザ、さらには主人公の内面に生じる幻想までをもひとつのショットの中に収める試みだ。 今回の[[🎞️『DIGGER/ディガー』]]では、[[🎞️『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』|『バードマン~』]]で疑似ワンカットという技術的挑戦を実現させた撮影監督である[[👤エマニュエル・ルベツキ]]と再びタッグを組む。今回も撮影面で何か大胆な仕掛けがあるのではないかと期待させる座組だ。 撮影についてひとつだけ述べるとすれば、[[📍グランドシネマサンシャイン 池袋]]の[[IMAX#IMAXレーザー/GTテクノロジー|IMAXレーザー/GTテクノロジー]]で観ることができて良かった、とだけ。客入り的に恐らく今週が最終週だったので、なんとか滑り込めた。 撮影は[[IMAX]]ではなく[[ビスタビジョン]]方式で撮影されており、一部のシーンは1.5:1と、いわゆるIMAXのフルサイズ(1.43:1)に近いアスペクト比で映写される。そして本作はアスペクト比の変化に意識的な作劇をしており、かなりIMAXシアターで観ることにアドバンテージがある映画だった。 ### 先行世代が遺した負債 基本的な話の軸は、資本主義陣営のリーダーたち――つまりアメリカの老人たち――が、地球規模の危機を前に右往左往するのだが、そのことごとくが悪手になる様を愚かしく描く風刺劇、ブラックコメディだ。類作として[[🎞️『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』]]や[[🎞️『ドント・ルック・アップ』]]を想起する作風である。 しかし、ただ老人たちを安全圏から笑うだけでは済まさない。老人たちは負けじとこちらに指を指してくる。お前たちが石油を手放せないから俺たちは掘り続けるのだと。都市の利便性を維持するために環境を破壊するのだと。今の幸福のために後の世代に負債を押し付けるのだと。 そんな資本主義の歪みを高らかに謳い上げる[[👤トム・クルーズ]]の姿は、まるで[[🎞️『ウルフ・オブ・ウォールストリート』]]において証券詐欺で市民から金を巻き上げる人物を演じた[[👤レオナルド・ディカプリオ]]を思わせるパワフルな怪演ぶりだ。 確かに、資本主義とは「今、ここ」のためにその外側のあらゆる資源を搾取する構造である、ということは今年[[🎞️『急に具合が悪くなる』]]の中でも講義されていたことである。 また、先行世代の環境破壊が現役世代の若者たちにとっての災害となり、それを鎮めるための生贄を要求するグロテスクさを描いた[[🎞️『天気の子』]]は、意外にも本作と近いことを描いていると感じる。 だがしかし、本作はやはりそういった事柄を改めて「どう語るか」が肝の映画だ。 現代は風刺芸が難しい時代である。現代の資本主義陣営のリーダーである[[👤ドナルド・トランプ]]大統領は常に我々の想像力の斜め上を行く暴走を見せており、生半可な戯画化ではすぐに陳腐化してしまう。 そんなハードルを飛び越えようと本作が打って出た奇手に、私も面食らった。しかし、その奇手によるデメリットは稀代のスーパースター[[👤トム・クルーズ]]の存在感によって挽回され、本作ならではの奇っ怪な語りでしか到達し得ないところに私を連れて行ってくれたように思う。そんな本作が仕掛ける博打に、個人的には乗りたいと思った。得も言われぬ力作である。 ## 情報 ![[🎞️『DIGGER/ディガー』#予告編]] ![[🎞️『DIGGER/ディガー』#主要スタッフ]] ![[🎞️『DIGGER/ディガー』#関連リンク]]