# 2026-10-29 [[📘『NHK「100分de名著」ブックス 兼好法師 徒然草』]]を読む ## 感想 >[!info] > ![[📘『NHK「100分de名著」ブックス 兼好法師 徒然草』#概要]] ### 鎌倉時代の[[𝕏]]ユーザー こないだ[[2026-10-15 『100分de名著』シリーズのKindle版を爆買いする|『100分de名著』シリーズのKindle版を爆買い]]した。 せっかくだし、さっそくどれかを読もうとしたのだが、全部で25冊もあるのでどう優先順位をつけるべきやらと迷ってしまう。 そこで、目を閉じながらどれにしようかな、と運否天賦に任せた結果が[[『徒然草』]]である。 [[『徒然草』]]が書かれたのは鎌倉時代の末期とされる。およそ700年前にまとめられた随筆だ。 [[👤兼好法師]]は「法師」とあるように出家人。当時から広く名を知られた人物だったわけではないようで、後世に[[『徒然草』]]の作者として名を残すことになるとは周囲も予想していなかったかもしれない。 そんな人物が「つれづれなるままに」書きつけた言葉は、改めて触れてみるとどうにも身に覚えがある。 それは義務教育で古文として触れたときには抱かなかった既視感。その正体は、著者の[[👤荻野文子]]さんも述べているが、ブログっぽいのだ。本書の刊行は2012年。当時ならともかく、いまやブログという言葉自体が古びて感じられる。だからいっそ「[[ソーシャル・ネットワーキング・サービス|SNS]]っぽい」と言ってしまってよいだろう。 本書を読み進めるうちに、私の中で[[👤兼好法師]]のイメージはフォロワー数4000人くらい、経験豊富さがにじみ出るポストを、たまに炎上しながらも淡々と続ける[[𝕏]]ユーザーとして固まっていった。 だからそこに書かれた言葉や、その言葉を生み出すに至る思索は、[[𝕏]]のタイムラインで流れてきたとしてもきっと「ふうん」と読み流してしまいそうだ。たまには「いいね」を押すかもしれない。まれに引用RPで「これ嫌い」と言ってしまうかも。それくらいありふれたもののように感じた。 ### 兼好法師はミソジニスト? 特に私が現代の[[ソーシャル・ネットワーキング・サービス|SNS]]っぽいと感じたのが、著者も学生の頃に[[『徒然草』]]が好きでなかった理由のひとつとして挙げている、女性評の酷さだ。本書では以下の箇所が引かれている(現代語訳)。 - 女の本性はみなねじけている(第107段) - もし賢い女がいるなら、それも親しみにくく、きっと興ざめするに違いない(第107段) - 妻というものこそ、男のもってはならないものである(第190段) こうして単体で抜き出してみると[[𝕏]]で日々流れてくるアンフェミたちの浅慮極まるポストにしか見えない。 しかし、兼好の目線はつねに物事を両面から見ることに特徴があると著者は述べる。第190段では確かに冒頭で妻を持つなと言っているが、その後に述べていることは兼好にとっての理想の男女関係だ。男女が関係を結ぶとはいかなることかについては、他の段でも論じられている。 こうした記述を丁寧に追い、論の全体を掴めば、彼が物事を突き詰めて考えていることが見えてくる。しかし、発言の一部だけを「切り抜き」されると簡単に炎上させられる隙があるタイプの書き手でもある。だから[[𝕏]]には向いていないかもしれない。 ### 兼好法師はデマ嫌い? [[ソーシャル・ネットワーキング・サービス|SNS]]は日々嘘が生産されている。事実に基づかない情報が大衆にめぐるとき、人類は愚行に走るものだ。 [[『徒然草』]]の第73段では嘘つきを三つの型に分類する。 >[!cite] > 兼好によると、嘘つきは、次の三つの型に分類できるようです。 > > ①ばれるのもかまわず、口から出まかせをいい散らしている無邪気な嘘つき > ②人から聞いたホラ話を、鼻をぴくぴくさせて得意げに語る嘘つき > ③もっともらしい態度で、ところどころをぼかしながら、よくは知らないふりをして、それでいて辻褄を合わせて話を作る嘘つき > > 引用:[[NHK「100分de名著」ブックス 兼好法師 徒然草]] 位置No. 1,109 ①は「100回言い続ければホントウになる」を地で行くbot。②は疑うことを知らず何でも真に受けてしまう素朴な愚者。③はやっかいな[[デマゴーグ]]だ。いずれも[[ソーシャル・ネットワーキング・サービス|SNS]]にごまんと生息している嘘つきたちである。 こうした嘘に騙されないための姿勢として、兼好は次のように語る。短いのでこちらは原文も含めて引用しよう。 >[!cite] > 下ざまの人の物語は、耳驚くことのみあり。よき人は、怪しきことを語らず。(第七三段) > (下賤な人の話は、聴いて驚くようなことばかりである。教養のある人は不思議なことは語らない) > > 引用:[[NHK「100分de名著」ブックス 兼好法師 徒然草]] 位置No. 1,166 情報に接する際の考え方として、私もこれは実践している。ある程度の「出来の良い話」を前にしたときには常に「ほんまか~?」と疑義を呈するのだ。例えば、[[2026-10-05 ちょっとバズったから反応をまとめる|「アダルトゲームだからできる表現がある」論]]とかね。 ### 人間は700年じゃ変わらない つれづれなるまゝに、日くらし[[𝕏]]に向かひて、心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書き付くれば、あやしうこそ物狂ほしけれ。 700年前の[[👤兼好法師]]と、私たちがやっていることは同じだ。そして、700年前の人々と私たちの価値観も、そうは変わらない。そんなことを思った読書体験だった。 ## 情報 ![[📘『NHK「100分de名著」ブックス 兼好法師 徒然草』#目次]] ![[📘『NHK「100分de名著」ブックス 兼好法師 徒然草』#関連リンク]]