# 2026-11-03 [[🎮️『CROSS†CHANNEL』]]をプレイ その2
![[レーティング#^r-18]]
![[ネタバレ#^danger]]
## 感想
### 攻略完了
久々にエロゲーを最後までプレイできた。
8月に一度プレイしようと思ったのだが修正パッチ探しなどで手間取り停滞。その後、様子見ではなく、本格的にプレイを開始したのが10月28日なので、なんと一週間で攻略できたことになる。やるじゃん。
[[2026-10-30 🎮️『CROSS†CHANNEL』をプレイ その1|前回のプレイログ]]で「おそらくこれからゲームの秘密が色々と分かってくるだろうタイミングだと判断した」と書いているが、ズバリ的中。
そのときは中盤の「**CROSS POINT**」編の途中までプレイしていたのだが、まさにここから本作のミステリ的な面白さにアクセルがかかった。
一週間という短い[[タイムループ]]の中で物語を広げるためには、それ以前の過去の出来事にアクセスする必要がある。群青学院放送部というコミュニティはどうして崩壊してしまったのか。その一端が語られ始めるタイミングだったのだ。
その波に乗って、私はのめり込むようにして一気にプレイし通すことができたのであった。
以下、ネタバレ前提で本作の面白かったポイントを語っていく。
また、ページ末尾の[[#おまけ]]にて、自分の理解のために作成した本作の構成図を載せている。込み入った話を理解するためのガイドになるかもしれない。
### タイムループに気付く者
個人的に一番印象に残ったのが「**INVISIBLE MURDER INVISIBLE TEARS**」編(以下「IMIT」編)である。
普通のエロゲー風に言えば「**山辺美希**ルート」に当たるのだが、このパートの作劇はまさに本作特有のループ構造でなければ実現し得ないものだった。
それは、==タイムループ構造について主人公が気づいていないにもかかわらず、主人公ではない人物がそのことに気づき、利用している==というところだ。
本作のタイムループ構造の特徴は、祠という例外的なシステムを除いてすべてがリセットされることにある。祠のシステムに気づかない限り、語り手である**太一**も例外なくリセットされてしまう。
ゲームの外側に立つプレイヤーだけが、物語中の時間がループしていることを認識している。そこで、選択肢を用いて太一の行動を変え、祠のシステムに気づかせることもできるのだが、それでも一週間が経過すればすべてがリセットされてしまう。
そして、==プレイヤーはタイムループのすべての周回を見ている(認識している)とは限らない==という点は重要だ。ゲーム内でプレイした三周目と四周目の周回の間に、無限に等しい数の周回があったとしても、語り手である太一が認識していなければ、プレイヤーもその存在に気づけないのである。この空白が、本作の時間SFとしての穴に思える箇所を埋める機能を果たす。
「IMIT」編ではあるイレギュラーが発生することでこれまでにない異変が起きる。
それまでは学校へ行くか、祠へ行くかの二者択一だったところに、新たに「田崎商店に行く」という選択肢が追加される。そもそも学校へ行くことを選択した場合も田崎商店に寄り道するのだが、あえてこの選択肢を選ぶことで、田崎商店で普段よりも殺気立った美希と遭遇することになる。
なぜ殺気立っているのか。それは曜子が死んだからだ。美希が仕掛けたトラップによって[^1]。
美希は祠のシステムに加えて、さらに祠の付近に滞在すれば世界のリセットに巻き込まれず記憶が維持されるという、まだプレイヤーに明かされていない情報にまで気づいている。そして「IMIT」編の終盤、それまでプレイヤーが見てきたすべての周回において、美希はずっと記憶を維持し続けていたことが明かされるのだ[^2]。
曜子の死は何十何百というループの中で極めて稀に発生するイレギュラーだった。生存したままリセットのタイミングで祠にいなければいけない美希にとって、曜子の存在は太一の暴走に対抗する保険となっていた。しかし、この周回では曜子の不在を補うため、美希は全員を自らの手で殺すという判断をする。だからこそ「IMIT」編ではそれまで起きていなかった連続殺人が繰り広げられるのである。
この「それまで起きていなかった連続殺人の発生」というプロット上のツイストに加えて、それまでずっと物語のなかに潜伏していたループを認識するメタ的存在の登場。この二重のひねりには、思わず痺れたのであった。
思えば美希のあの飄々としたキャラクターは人類の消失という危機的事象を前にした人物としては楽天的すぎる感じがあった。
しかしそれはエロゲー的な美少女表現として、あるいはシリアスドラマの重さを抑える清涼剤の役割として、疑問もなく受け入れていた。
ところが彼女だけがすでに何周も前から記憶の一貫性を保っていたのであれば、あの軽さも納得だ。本作のストーリーテリングの技巧がもっとも光るパートである。
### 「クロス・チャンネル」の多重性
作品テーマについても触れておきたい。
[[🎮️『CROSS†CHANNEL』]]というタイトルがやはり秀逸だ。
劇中で語られる多くの言葉がこのタイトルと呼応し、作品のメッセージを増幅するのである。
このタイトルは、劇中で放送部が実施するラジオの番組名として「CROSS†CHANNEL」が提案されることに由来する。
黒須太一がDJをやるから「黒須チャンネル」、それを英単語にして「CROSS CHANNEL」。「†」は親友ポジションである**桜庭**の提案だ。その場では中二病的なギャグとして処理されるが、この記号は他者を攻撃するための短剣、他者との繋がりを求める放送アンテナ、そして無限の周回を表す変数Xを象徴する。
ラジオは、ひいては情報を発信することは、他者との繋がりを欲する行為である。
舞台である**群青学院**は社会に適応できない病を抱えた少年少女の隔離施設だ。他者との触れ合いに困難を抱える者や、そもそも他者との関係を断った者たちの集まりである。そんな彼らのコミュニケーションは摩擦が強く、互いに傷つけ合う。それでも、他者との繋がりを欲することは止められない。
人類の消失もその欲求に拍車をかける。社会インフラが止まり、ある種の漂流状態になった彼らはコミュニケーションを強いられることになる。私たちは独りで生きることができないという事実を改めて突きつけられるのだ。
それなのに彼らの交流はうまくいかない。簡単にバラバラになってしまう。そのうまくいかなさが一週間のタイムループによる反復によって強調される。これほどまでに他者を求めているのに、その欲求が満たされることは稀なことなのだ。
極めて特殊なケースである最初の一周目にあたる「**CROSS†CHANNEL**」編を除いて、その試みが成功するのが中盤の「CROSS POINT」編である。とりわけ太一と**霧**の敵対関係が、しかるべきタイミングでの過去の告白によって緩和される。結果、全員は揃うわけではないものの、ラジオ放送までは漕ぎ着けられる。
==「CROSS POINT」編の結末は、二周目以降のループ構造のなかで最初に訪れるコミュニケーションの成功であり、そして最後の成功でもある。==「CROSS POINT」の名の通り、交差点に当たるこの編以降、彼らが再び結束を取り戻したと言えるような結末には至れなくなる。
その原因は先述した「IMIT」編にあると私は読む。つまり、記憶を維持する美希の干渉があってはじめて、彼らの結束、そしてラジオ放送が実現したのではないかと。しかし「IMIT」編のラストで美希はリセットを受け入れる。それ以降の美希は一周目の普通の女の子になってしまう。
だから続く「たった一つのもの」編で、太一はこれまでのノートの記録を駆使してハッピーエンドを目指そうとするのだが、そこには限界が生じてしまう。「CROSS†CHANNEL」編の結末はおろか、「CROSS POINT」編にすら到達することができなくなるのだ。
コミュニケーションは難しい。本当に難しい。本作は物語のみならず、ゲーム全体の構成によっても、その困難さを体現して見せる。ほとんど不可能、奇跡の御業……。
それでも、やっぱり、私たちは他者との繋がりを求めてしまう。それが人間なのだ。
>[!cite]
> 昼時。
> 自力で食事を取れるものが、ぽつぽつと食事をしている。
> 集まりはなく、全員一人で食べている。
> 会話もない。
> 俺と新川が話していたくらいだ。
> 太一「みんな穏やかに過ごしている」
> 太一「ある意味、一人で生きる強さを持った連中だ」
> 太一「人と繋がる必要もなく、一人で完結している」
> 太一「完成された人類だ」
> 霧「そんなの……おかしいです」
> 太一「未熟なのに人と繋がると、齟齬は起きる」
> 太一「それもえてして、普通の人々の間で起こるじゃないか」
> 太一「だから人は、完璧になったら一人で事足りるべきだ」
>
> 引用:[[🎮️『CROSS†CHANNEL』]] 「CROSS POINT」編
完成されていない太一たちはまだ、他者との繋がりを構築するためのチャンネルを持っている。そして、交差するかも分からない電波を発信し続ける。たとえ一人になったとしても。
……最後に一つ付け加えると、最後の最後に[[🎮️『CROSS†CHANNEL』]]というタイトルをもじった、しょうもないダジャレで幕を閉じるのも乙だ。
壮絶なドラマを描く重い作品ではあるが、同時にこの軽さもまた本作らしい。思わず彼に「おつかれ」と告げたくなった。
### おまけ
私の理解のために本作の章立てやプロットを把握するための構成図を作成した。おまけとして共有する。
![[『CROSS†CHANNEL』構成図.png]]
## 情報
![[🎮️『CROSS†CHANNEL』#主要スタッフ]]
![[🎮️『CROSS†CHANNEL』#関連ノート]]
![[🎮️『CROSS†CHANNEL』#関連リンク]]
[^1]: 正直、この辺りの作劇は不細工だと思う。まったく関係のないはずの曜子の生き死にが太一の選択によって確定するという奇妙さを説得する解釈は思い浮かばない。
[^2]: 周回によっては美希が死亡したり、祠に辿り着く前に一週間の終わりに到達したりするケースはある。その直後の周回では美希の記憶はリセットされるはずであり、一見すると矛盾している。しかし、作中の語り手である太一が記憶を継承していない期間に、美希だけが祠を利用して記憶を蓄積し続けた周回が(プレイヤーの体験外で)存在したと仮定すれば、「記憶を維持し続けた美希」が登場する周回だけをプレイヤーが体験していると解釈できる。